2011 Fiscal Year Annual Research Report
アストロサイトの分化制御と多様性を生み出す分子メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Neural Diversity and Neocortical Organization |
Project/Area Number |
23123502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長尾 元史 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特任研究員 (00359671)
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Keywords | 神経発生 / 神経幹細胞 / グリア分化 |
Research Abstract |
哺乳動物の脳神経系は、形態的、機能的に多様な細胞により構成されている。これらの細胞は、自己複製能と多分化能をもつ神経幹細胞から生み出される。この幹細胞は、先にニューロンへと分化し、引き続きグリアを生み出す。ニューロン産生期には、グリア分化は抑制され、グリア産生期にはニューロン分化が抑制されるという相互に排他的なメカニズムがはたらいていると考えられるが、その分子メカニズムに関しては未だ不明な点も多い。これまでに、原癌遺伝子Mycと癌抑制遺伝子p19ARFが拮抗的に働き、神経幹細胞のニューロン・グリアの運命決定の制御を行うことを報告している(Nagao et al. J. Cell Biol.2008)。本年度の研究により、Mycがp19ARFに加えて、グリア分化において重要な働きをする転写因子Olig2の発現制御によりグリア分化を抑制することを見出した。c-Mycのコンディショナルノックアウトマウスと過剰発現マウスを作製し、発生後期におけるOlig2陽性細胞の数を調べたところ、ノックアウトマウスではその数が上昇し、過剰発現マウスでは減少していた。神経幹細胞の培養系を用いても、同様の結果が得られた。さらに、MycはOlig2の転写開始点付近に結合し、そのプロモーター活性を抑制することも見出した。これらの結果より、Olig2はMycの標的分子の一つであり、MycはOlig2の発現を直接抑制することでグリア分化を抑制することが示唆された。以上より、Mycがなぜニューロン分化を促進しグリア分化を抑制するのか、その分子メカニズムの一端が明らかとなった。この成果により、再生医療において移植細胞のソースとして期待されている神経幹細胞の制御メカニズムの理解が進んだと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでMycがニューロン、グリアの系譜選択を制御していることは明らかであったが、その分子メカニズムが未解明であった。しかし、本年度の研究で、Mycの新規標的分子としてOlig2を見出し、Mycがグリア分化を抑制する分子メカニズムの一つは、MycによるOlig2の発現抑制であることを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Mycがグリア分化を抑制する分子メカニズムを解析する過程で、逆に、グリア分化、特にアストロサイト分化を促進する新規因子を見出している。今後は、この新規分子の解析を中心に行い、アストロサイトの分化制御メカニズムを明らかにしていく予定である。
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Research Products
(2 results)