2011 Fiscal Year Annual Research Report
大脳新皮質における神経細胞の極性化を司る分子基盤の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Neural Diversity and Neocortical Organization |
Project/Area Number |
23123503
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞田 佳門 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50431896)
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Keywords | 大脳新皮質 / LKB1 / 神経細胞移動 / 樹状突起 / ダイニン / 核移動 / 中心体 |
Research Abstract |
大脳新皮質において、脳室帯で誕生した錐体神経細胞は脳表層側へと放射状に移動して、最終目的地において軸索や樹状突起を伸長して成熟する。この神経細胞の移動と成熟の過程は謎が多い。私はこれまで、LKB1と呼ばれるタンパク質キナーゼがこれら両過程をコントロールしていることを見出していた。本研究では、LKB1の下流経路を探ることにより、神経細胞移動と神経細胞成熟の分子機構を明らかにすることを目的とした。本年度の研究により、移動中の神経細胞において、AMP活性化キナーゼがLKB1によってリン酸化されて活性化することを見出した。AMP活性化キナーゼは、微小管依存的に中心体近傍に濃縮して存在しており、微小管モーターである細胞質ダイニンと結合すること、さらに、ダイニン活性を正に調節していることを明らかにした。このことから、AMP活性化キナーゼはダイニン複合体に結合して、その機能を調節し、ダイニンの移動に伴って中心体近傍に運ばれていると結論できた。重要なことに、移動中の神経細胞においてAMP活性化キナーゼを発現抑制すると、神経細胞の移動が停滞すると共に、核が中心体方向へ移動できなくなることを見出した。このことからLKB1はAMP活性化キナーゼを介して核移動をコントロールし、正常な神経細胞移動に寄与していることが示唆できた。一方、神経細胞の成熟過程におけるLKB1の役割を検討するため、マウス新生児の脳スライス上で神経細胞を培養する方法を用いた。この方法では、培養した神経細胞は時間経過に伴って、極性が確立し、脳表面側に樹上突起を形成する。興味深いことに、LKB1の発現を抑制した培養神経細胞の場合、樹状突起がランダムな方向に伸長した。一方、この培養系では、樹状突起が形成されるよりも早く、細胞内の中心体が脳表層側に配置することを見出した。この配置を指標にして実験を実施したところ、LKB1の発現抑制によって、中心体の配置がランダムになり、中心体が配置する領域から樹状突起が形成された。すなわちLKB1は、神経細胞の正しい極性確立に寄与しており、その結果としての脳表層側に適切に樹状突起が形成されるのを促していると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、神経細胞移動および成熟におけるLKB1シグナリングの役割を解析することを目的とした。本年度の研究により、移動中の神経細胞におけるLKB1の下流分子が同定でき、その役割を明ちかにすることができた。さらに、神経細胞の成熟過程においてLKB1が細胞極性を調節していることを明らかにした。これらの知見は極めて重要であり大きな成果であると考えられるため、当初の計画以上に研究が進展したと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を基に、AMPキナーゼの核移動における役割を詳細に解析する。また、成熟中の神経細胞において、LKB1を活性化する因子やシグナリングを調べ、神経細胞の極性化に重要な経路を明らかにしたい。
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