2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹前駆細胞の運命決定に対する動的な調節機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Neural Diversity and Neocortical Organization |
Project/Area Number |
23123518
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
廣瀬 智威 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20381668)
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Keywords | 神経幹細胞 / 発生・分化 / RAR3 |
Research Abstract |
大脳形成過程では、神経幹細胞増幅期から神経産生期への分化過程制御は最終的な神経細胞数を規定する重要なポイントである。この分化過程には神経幹前駆細胞の自己複製から神経分化への運命決定調節機構の転換が必要であるが、その分子機構は十分に解明されていない。そこで申請者は、無脊椎動物の各種細胞における非対称分裂を通した運命調節因子のホモログであるPAR3に注目して解析を続けてきた。 本年度は主に終脳特異的PAR3欠損マウス胚のサンプルを用い、神経幹前駆細胞の運命決定において重要であることが示されている分子群の発現部位・発現量を組織学的・分子生物学的に解析した。その結果、幾つかの転写調節因子や増殖・分化関連分子において発現分布や発現量の異常を見出すことができた。これは、PAR3が神経幹前駆細胞の運命決定において転写調節因子などを介したシグナリングの動的制御に関与する可能性を示唆するものと考えられる。 また、終脳特異的PAR3欠損マウス胚における神経幹前駆細胞の運命決定バランスを評価するため、BrdUパルスラベル法と各種分化マーカー染色を組み合わせて一回の分裂による各細胞の産生バランスを解析した。その結果、PAR3の欠損によって神経細胞の産生バランスが崩れることを見出した。 以上の結果から、PAR3は神経幹細胞増幅期から神経産生期への分裂モード遷移において、転写調節因子を介した運命決定シグナリングの動的制御に重要であることが示唆された。今後はその動的制御とPAR3との機能に関してより詳細な解析を続ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していた実験の条件検討は完了し、細かい点ではあるものの新たな問題点が生じ、幾つかの計画に変更が必要になったため。但し、実際のサンプルを用いた解析により新たな結果も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析結果に基づき、各種化学発光・蛍光レポーターとライブ・セル・イメージングを組み合わせ、神経幹前駆細胞の運命決定に重要な動的な調節機構に対するPAR3の寄与について解析を進める。 観察対象は胎生10.5日のマウス終脳初代培養細胞とし、終脳特異的PAR3欠損マウス終脳細胞、及び野生型マウス終脳細胞にaPKC特異的阻害剤を組み合わせたものを用いる。これらの細胞に化学発光・蛍光レポーターをトランスフェクションしたものをライブ・セル・イメージングにて解析する。細胞間相互作用に基づく神経幹前駆細胞の自己複製能を維持させるため、上記の細胞に加えて野生型細胞を混合した高密度培養条件も検討する。
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Research Products
(2 results)