2011 Fiscal Year Annual Research Report
異なる網膜再生様式をもつ2種のツメガエルを用いた再生メカニズムの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms underlying reconstruction of 3D structers during regeneration |
Project/Area Number |
23124506
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
荒木 正介 奈良女子大学, 理学部, 教授 (00118449)
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Keywords | 網膜再生 / ツメガエル / 色素上皮細胞 / 毛様体 / 分化転換 |
Research Abstract |
アフリカツメガエルとネッタイツメガエルはごく近縁のツメガエルである。いずれのツメガエルも、成体になってからも網膜を再生可能することができる。網膜をすべて除去すると、約1ヶ月後にはほぼ網膜再生が完了する。研究代表者はすでにアフリカツメガエルの網膜再生を報告していたが、最近ネッタイツメガエルにおいても同様の再生が見られることを発見した。ゲノム情報が明らかになっているネソタイツメガエルは再生メカニズムの遺伝学的な研究をする上で有利である。そこで、本年度はネッタイツメガエルの再生様式がアフリカツメガエルと比べて何がどのように違うのかを明らかにした。 まず、再生の起源となる細胞は2タイプ、網膜色素上皮(RPE)細胞と毛様体辺縁部(CMZ)の網膜幹細胞である。有尾両生類では、RPE細胞が主要な起源であり、アフリカツメガエルも同様であるが、CMZの幹細胞も動員される。これに対して、ネッタイツメガエルでは、ほぼCMZの幹細胞だけが網膜再生に動員されることが確認され、RPE細胞からの網膜再生は観察されなかった。アフリカツメガエルでは、RPE細胞はもとの上皮層から遊離し、残置の網膜血管膜に移動して再び上皮を形成する。これが分化転換して、網膜を再生する。ネッタイツメガエルにおいても、RPE細胞は同様に遊離し、新たに上皮様構造を形成するが分化転換することなく次第に消失する。このことは、組織培養においても確認された。すなわち、RPE細胞の移動はあるが、神経細胞への分化はおこらなかった。以上のように、二つのツメガエルを比較すると、一方はRPE細胞が分化転換、網膜再生するが、他方はしないことが明らかになり、今後これらの細胞の分子生物学、細胞生物学的な性質を明らかにすることにより、なぜ分化転換がおこるのかをより明確にすることができると期待できる。さらにCMZの幹細胞から網膜が完全に再生できることは初めての報告であり、他の動物に比べて、なぜこのようなことがおこるのかを明らかにすることの意味は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、2種のツメガエルの再生様式を比較することにより網膜再生のメカニズムを明らかにすることであり、初年度の成果は、何をどのように比較するのかという点について、明確にすることができたことである。すなわち、RPE細胞に注目し、動物の再生系、組織培養系の両方で比較検討し、よく結果が一致することを明らかにした。また、これ以外にCMZ細胞の増殖能の大きな違いを発見したことは、今後他の動物の網膜再生を考える上でも重要な成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べたように、2種のツメガエルでRPE細胞が全く異なる振る舞いをすることを明らかにしたことにより、今後の研究の焦点を絞ることができた。また、網膜再生を再現できる培養系をすでに確立しているので、この系において比較研究することができる。RPE細胞が再生過程に入るのに必要ないくつかのステップがあり、まず基底膜からの遊離、次に血管膜への移動、上皮構造の再形成過程である。これらのプロセスを分子的に厳密に比較することにより再生に必要な遺伝子や細胞環境について明らかにできると考えている。
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