2011 Fiscal Year Annual Research Report
大規模遺伝子発現データに基づく四肢再生過程の数理モデル構築
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms underlying reconstruction of 3D structers during regeneration |
Project/Area Number |
23124510
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森下 喜弘 独立行政法人理化学研究所, 発生幾何研究ユニット, 研究ユニットリーダー (00404062)
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Keywords | 位置情報 / 情報コーディング / 最適デザイン / 幾何学解析 / 定量生物学 |
Research Abstract |
イモリやアフリカツメガエル等で観察される四肢再生現象を理解するために、まず脊椎動物四肢の正常発生現象において、組織変形と細胞の空間認識メカニズムの解明からスタートした。対象としては、発生研究の歴史が深く観察が比較的容易なニワトリを用いた。四肢の形態形成過程で問題となるのは主に2点あり、(i)なぜ組織が方向性を持って伸長するのか、(ii)四肢に特徴的な形状はどう決まるのか、である。この問題を解決するために、以前より行ってきた発生器官における組織変形の幾何学的解析に加え、形態形成過程のシミュレーションを行うことで、(i)と(ii)ともに組織の局所的な変形異方性の空間制御が重要であることがわかった。他方で、発生ステージごとに体積増加率の特徴的な空間パタンが見られたが、これらは組織のサイズを規定するには重要であるが、形態特徴量への反映は小さいことがわかった。この結果は現在論文にまとめて投稿準備中である。また、本解析により注目すべき幾何学量が明らかになったので、次の段階としてそれらがどう分子や細胞の振る舞いと関連してくるかの研究へとシフトして現在研究を進めている。 空間認識メカニズムに関しては、モルフォゲンの濃度勾配による位置情報コーディング過程を数学的に定式化し、理論上最適なコーディングを導出し、論文として報告した。また、四肢再生とは異なるが、モルフォゲン情報源の局所化をシグナル経路が良くわかっているショウジョウバエの翅原基を例に数理モデル化し、ノイズ環境下でもロバストに情報源を正しく配置するためのメカニズムについて解析を行い論文として報告した。理論上最適なコーディング方法は、実際の現象を解析する際に、生物が進化の過程でどういう意味でどの程度最適性を実現しているかを解明する上で重要な基準を与えるため、空間認識問題を考える上で非常に重要な役割を果たすと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、今年度はニワトリ四肢のトランスクリプトーム解析を中心とする予定だったが、形態形成シミュレーションなどにより、器官形態そのものを決める重要な幾何学因子(変形異方性の空間制御)が明らかになってきたため、解析の中心をシフトした。これは予定とは異なるが、研究計画時点で予想していなかった新しい結果であり、四肢再生現象を理解するための重要な情報となると考え、研究は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の予定だったニワトリのトランスクリプトーム解析を行い、変形異方性の空間制御メカニズムを担う因子を解明することを試みる。これが明らかになれば、アフリカツメガエル等で遺伝子改変個体を作成し、実際に再生芽の伸長過程にどう影響するかで確認することがわかる。また、成長する組織における細胞の空間認識と運命決定について理論を構築し、脊椎動物四肢発生・再生時の遠近軸パターニングシステムへ適用し、そのメカニズムを解明を目指す。
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