2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムアダプテーションにおける損傷乗り越えDNA複製の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
23125507
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
益谷 央豪 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (40241252)
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Keywords | DNA修復 / DNA複製 / 損傷乗り越え複製 / タンパク質間相互作用 / DNA損傷トレランス / DNAポリメラーゼ |
Research Abstract |
生物はDNA損傷を修復して正常な状態に回復する機構に加えて、ゲノムDNA上にDNA損傷を残したまま複製する損傷トレランスと総称される機構を備えている。高発癌性遺伝疾患である色素性乾皮症バリアント群の責任遺伝子産物であるDNAポリメラーゼ・イータ(Polη)は主要な紫外線損傷について、正確で効率の良い損傷乗り越え複製を担う。しかし一方で、Polηは本質的にはたいへん誤りがちなDNAポリメラーゼであり、免疫グロブリン遺伝子領域の体細胞超突然変異の生成に関わるなど、ゲノムの多様化に寄与する能力を備えている。また、Polηは複数の損傷乗り越え複製関連タンパク質やDNA修復タンパク質と相互作用するがその意義はほとんど明らかにされていない。本年度は、PolηとRAD18との相互作用について解析を行った。損傷乗り越え複製の制御において、DNA複製のスライディングクランプであるPCNAのモノユビキチン化が重要な役割を担う。RAD18はユビキチンリガーゼE3であり、E2であるRAD6と複合体を形成して、PCNAのモノユビキチン化を担う。また、PolηとRAD18は直接相互作用し、Polηの細胞内動態制御に重要であると考えられている。そこで、両者の相互作用の生理的意義をより詳細に解析するために、Rad18との相互作用に必要な領域の絞り込みを進めた。また、他の損傷乗り越え複製及び修復タンパク質群との相互作用についても併せて解析を行った。一方で、損傷乗り越え複製後のDNA損傷が世代を超えて娘細胞へ伝播される可能性を検討するために、DNA複製に伴うDNA損傷の修復反応を検出する系を構築した。これらの計画により、ゲノムアダプテーションにおける損傷乗り越え複製機構の役割の解明に繋がることが十分に期待できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、PolhとRAD6/RAD18との相互作用領域の絞り込みを進めると同時に、他の損傷乗り越え複製及び修復タンパク質との相互作用についても併せて解析を行った。また、損傷乗り越え複製に伴う損傷の修復を解析し、新規細胞生物学的実験系の構築を進めており、おおむね順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、初年度の解析を進め、ゲノムアダプテーションにおいて変異が生じる機構とその意義を損傷乗り越え複製機構を中心に解明するために、紫外線等の外的な要因によるDNA損傷への応答に加えて、当初の計画通り、内因性のDNA損傷に対する応答を併せて解析していく予定である。特に計画の変更や大きな問題点は現段階では想定していない。
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