2011 Fiscal Year Annual Research Report
マウスPIWIファミリーによる減数分裂期の染色体構造の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
23125508
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 透 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (50280962)
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Keywords | 減数分裂 / マウス / PIWIファミリー / 小分子RNA / レトロトランスポゾン / DNAメチル化 / 対合 / 精子形成 |
Research Abstract |
生殖細胞は、ゲノム情報を次の世代に継承する細胞系列である。生殖細胞は、減数分裂をおこなうことにより、半数体の精子や卵をつくる。減数分裂では、父母由来の相同染色体どうしが対合し、その間で組換えをおこなうことで、新しい遺伝情報の組み合わせを作りだす。哺乳類においては、相同染色体の対合の制御機構ついてはよく分かっていない。 マウスPIWIファミリーは、piRNA(PIWI-interacting RNA)と呼ばれる小分子RNAを介して、転移因子レトロトランスポゾンの発現抑制に関与している。マウスPIWIファミリーに属するMILIとMIWI2を欠損したマウスでは、胎仔期の生殖細胞においてレトロトランスポゾン領域のDNAメチル化が正常に獲得されず、その発現上昇が認められる。本研究では、まず、これらのマウスでは、生後の減数分裂期において、相同染色体の対合不全とDNA損傷の蓄積が生じるため、アポトーシスにより精子形成が停止することを示した。一方、相同染色体の組換えは、Spo11により導入されたDNA切断部位を介しておこなわれる。Spo11とMILI、Spo11とMIWI2の二重欠損マウスでは、DNA損傷の蓄積が消失した。さらに、MILIやMIWI2の単独の欠損マウスでは、DNA損傷は対合不全部位に蓄積していた。このように、MILIやMIWI2が欠損すると、Spo11により導入されたDNA切断が対合不全により修復されなくなり、これによりDNA損傷の蓄積がもたらされることが明らかとなった。以上の結果は、レトロトランスポゾンのDNAメチル化は相同染色体の対合に必須であることを示しており、さらに、レトロトランスポゾンは、相同染色体の対合という生理的な機能を担うように、ゲノム環境に適応した可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに得られた研究結果から、レトロトランスポゾンが、単なる利己的な転移因子ではなく、生理的な機能を担うようにゲノム環境に適応した可能性が示唆され、本新学術領域研究が推進する「ゲノム適応」という課題に一定の成果をもたらすと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次に、レトロトランスポゾンのDNAメチル化と対合制御の関係を解析する必要がある。まず、MILIやMIWI2の欠損により、相同染色体の対合過程がどのような影響を受けるかを、減数分裂の進行を追いながら調べる。また、対合形成部位にはレトロトランスポゾンが濃縮されているという報告があることから、MILIやMIWI2欠損マウスと野生型マウスにおける対合の形成部位を比較する。さらに、MILIやMIWI2欠損マウスにおいて、対合に必須なヒストン修飾を解析するためには、減数分裂期の生殖細胞を特異的に精製する必要がある。本年度、それに用いるトランスジェニックマウスを作製し精製法を確立したので、レトロトランスポゾン領域のヒストン修飾を解析する。
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Research Products
(4 results)