2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム多型によるマウス相同組換えホットスポットの可塑性
Publicly Offered Research
Project Area | Systematic study of chromosome adaptation |
Project/Area Number |
23125514
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
城石 俊彦 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (90171058)
|
Keywords | 遺伝 / ゲノム / 相同組換え / 発生・分化 |
Research Abstract |
Psmb9ホットスポットにおけるオス組換え抑制因子の同定 オス特異的に組換えを抑制する因子の存在が推定されたMHC内責任領域についてマウス精母細胞で発現する候補遺伝子や転写ユニット(機能性RNA)を探索し、マウス精巣にのみ特異的に発現する遺伝子BCO51142を見出した。この遺伝子は強塩基性タンパク質をコードし、精子完成過程において核凝縮に関与する精子核移行タンパク質やプロタミンよりも早い時期(第一減数分裂期)に生殖細胞に特異的に発現し、核凝縮とは別の機能を有する可能性が考えられた。 2.ホットスポット部位のヒストン修飾の解析 ホットスポットでのヒストンH3のメチル化やアセチル化を、組換え活性のあるR209染色体、組換えがオスで抑制されるR201染色体、オスでの組換え抑制が解除されたR203染色体で解析するため、凍結保存されていた各染色体を持つマウス個体を蘇生した。各マウス系統の生殖細胞でピストン修飾を解析する計画である。 3.野生マウス集団におけるPrdm9の遺伝的多型解析 ホットスポットの部位特異性はPrdm9遺伝子のZFA多型により決定される。そこで、国立遺伝学研究所が長年にわたって収集した野生マウス標本でZFAの遺伝的多型の集団解析を行った。特に、ZFの結合配列認識に使うアミノ酸置換が集中する3アミノ酸残基に着目して、ZFAをカラーコード化して調べた。この結果、マウスの種全体としてZFのリピート数やアミノ酸置換を含む膨大な多型が検出された。哺乳類遺伝子でこの多型に匹敵するのは、MHCクラスI、II遺伝子のみである。マウス各亜種には、地域や亜種を代表するような特有のZFA多型があり、各亜種を特徴づける組換えホットスポットが存在する可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MHC内責任領域に、オス特異的な組換え抑制因子の有力な候補遺伝子であるBCO51142を見出した。この遺伝子は組換え部位の特異性を決定するPrdm9遺伝子と同様に、第一減数分裂期の生殖細胞に発現し、アミノ酸組成から推定してDNAと結合する可能性がある。ホットスポットでのヒストン化学修飾については、実験材料であるホットスポットでの複数の組換え由来マウス個体の準備が遅れたが、準備が整ってきたので、今後解析まで進めて行く予定である。野生マウス集団でのPrdm9の遺伝的多型解析は当初実験計画にはなかったが、この遺伝子がマウスの種分化遺伝子としても報告されたことから、急遽実験を行った。この結果、Prdm9がMHC遺伝子に匹敵する莫大な多型を示すこと、一方、マウス各亜種を特徴づけるような多型がみられることが明らかになった。これらの成果は、今後のPrdm9研究を進めるための重要な指針を与えるものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
オス特異的な抑制因子の候補として同定したBCO51142遺伝子は、精子完成過程において核凝縮に関与する核移行タンパク質やプロタミンよりも早い時期(第一減数分裂期)に生殖細胞に特異的に発現し、核凝縮とは別の機能を有する可能性がある。今後は、その詳細な遺伝子機能を解明していく方針である。また、組換え抑制とヒストン化学修飾の関係については、準備が整ったマウス系統を用いて、解析をはじめる計画である。野生マウス集団のPrdm9遺伝子の多型解析の成果は、年内に論文発表を行う予定である。また、この多型データに基づいて、遺伝的に大きな距離のあるPrdm9アリルを導入したトランスジェニックマウスを作製し、組換え部位の分布を解析して、Prdm9がホットスポットを決定することを直接的に証明することが可能と考えている。また、この遺伝子が普遍的な哺乳類における種分化遺伝子であるか否かを検証していく方針である。
|