2011 Fiscal Year Annual Research Report
協調ネットワーク解析による複合適応形質要因の発見
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
23128504
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬々 潤 東京工業大学, 大学院・情報理工学研究科, 准教授 (40361539)
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Keywords | ネットワーク / 進化 / タンパク質相互作用ネットワーク / 遺伝子発現 / 比較ゲノム |
Research Abstract |
進化の理解が難しい要因として,常に生存競争に有利な選択だけでなく,一度不利な形質を獲得することで,その後の生存を有利に進める現象がある.このような一見矛盾する作戦は,計算機科学では複数の変数を組み合わせて最も良い回答を得る「組み合わせ最適化問題」を解く際に局所解から抜け出す戦略に現れる.局所解を抜け出すには大胆な戦略変更が必要であり,細胞においては,遺伝子ネットワークの変更がそのような戦略変更を容易に起こす方法のひとつと考えられる.本研究では,種間で利用されるネットワークを比較する事で,進化の過程で起こったネットワーク変化を捉え,複合適応形質の可能性のあるネットワークとその要因を推定する. 本年度は,ネットワーク比較技術ANGIEを開発した.ANGIEは,与えられたネットワークを細かに比較するのではなく,全体の概要構造に着目し,それらが近くなるように要約する手法である.これにより,既存ネットワーク比較手法で起こっていた,辺1本の違いによって共通性発見ができなくなる問題を解消し,大域的なネットワーク変化を捉えることが可能となった,また,本技術をショウジョウバエと線虫のタンパク質相互作用ネットワークに適用し比較することで,成長因子周りの保存が高いことを確かめた.また,本研究にネットワーク自身の信頼性,多様性も重要である.遺伝子間の相互作用を求める手法の一つに共発現解析がある.次世代シーケンサデータにおいて,発現や制御領域の種間対応を取れるようにするため,リード(次世代シーケンサで得られる短いDNA配列)を実験を行った種から他種へと変換するソフトウエア群RECOTを開発し,次年度次世代シーケンサデータを用いた発現制御解析への準備を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワークの比較技術の開発に成功したため,概ね順調に進展している.当初計画時より,次世代シーケンサの価格下落が激しく,マイクロアレイ情報は次世代シーケンサによるRNA-seqで置き換えられる可能性が高くなった.この事態に対しても,座標変換ツールの作成で対応可能となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は以下の点に着目して研究を行う.(1)比較したネットワークの結果を生物学的な知識と照らし合わせ,手法の精度改善を行なっていく.(2)非モデル生物とモデル生物のネットワークを比較する事で,適応形質の発見へとつなげる.
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Research Products
(1 results)