2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミヤコグサとダイズ野生種における環境適応に関わる遺伝子基盤の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
23128508
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸口 浩彰 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70206647)
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Keywords | 種分化 / 開花 / ミヤコグサ / ダイズ / ゲノム比較 |
Research Abstract |
1. ミヤコグサのRILを対象にしたゲノム比較と開花期関連遺伝子の特定 ミヤコグサの早咲き(Miyakojima MG-20)と遅咲き(Gifu B-129)の組み換え自殖系統を育成して、「早咲き(播種から開花まで33日~35日)」「遅咲き(55日~70日)」を5系統ずつ選抜し、DNAseqでゲノム比較を行った。その結果、4SNPsの多型が開花期に関連しており、これら全4SNPsがChr1の特定の部位に集中していた。この部位の周辺には、開花時期関連の2種類のQTLが位置していることが、かずさDNA研究所による研究で明らかにされており、研究に用いたRILの系においては、このchr.1の特定の部位が開花時期の決定に関わっていることが期待される。また、同定されたSNPのひとつは、まだ公表できないが、その遺伝子型が開花時期や成長に与える影響が大きいと考えられる。 2. 候補遺伝子を対象にしたゲノム比較 ミヤコグサとツルマメの野生系統、アメリカ産栽培ダイズを対象にして、フィトクロムなどの光受容体遺伝子群と、E1, E2(GIGANTEA)の概日時計遺伝子群の多型を解析した。ミヤコグサでは、PHYA, PHYB, PHYE, E1, GIGANTEAに多型がみられ、機能に非常にクリティカルな影響をもたらすドメインに変異がある場合と、機能が不明だが集団内多型としてみられる非同義的置換が混在していた。ミヤコグサにおけるGIGANTEAはこれまで存在すら不明であったが、その位置と構造を特定するとともにアミノ酸配列多型を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究によって、「早咲き個体」と「遅咲き個体」の間で明らかに分化している遺伝子座を確定することが出来た。このことは大変に大きな知見であり、成功であったと受け止めている。さらに、これらの遺伝子座が、全て同一染色体上の近傍に連続して配置していること、ならびに先行研究において開花時期のQTLと同定されている箇所に近いこともこの研究結果の確からしさを予感させる。これに加えて、これらの遺伝子座はアミノ酸置換を伴う非道義的置換であること、幾つかの遺伝子座は植物細胞の分裂と伸長を制御する遺伝子のCDSであることも、開花時期の違いをもたらす要素として有意義な知見だと考えている。本研究課題は、本来4年間程度で実施することが妥当なテーマであるので、この新学術領域研究の公募班としての2年間の研究として良い知見が得られたと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後に、公募班として再度採択されることによって、適切なレベルに到達できると考える。この2年間の間に、研究材料のミヤコグサにおいて、日本国内野生系統のゲノム解析がデンマークと日本で相当進んだため(研究目的は根における根粒形成)、申請者が特に着目している遅咲きの野生株(北海道などの高緯度地域)や早咲きの野生株(沖縄などの低緯度地域)のゲノムを解析して、前述のデンマークー日本の研究グループのデータを援用させて頂くことにより、ゲノム比較、開花時期との相関解析を進めていくことができる。このときには、本年度の研究知見と同一の遺伝子領域が、候補の一つとして再度ピックアップされるとともに、これまでの2年間の研究では見過ごしてしまった別の責任領域も見いだせると期待している。
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