2011 Fiscal Year Annual Research Report
送粉適応した協調的な花形質の進化:キスゲ属における遺伝子基盤とその分子進化の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
23128510
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新田 梢 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (60589448)
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Keywords | 送粉 / 花形質 / 花色 / アントシアニン / キスゲ属 / 発現解析 / 雑種 / 進化 |
Research Abstract |
キスゲ属のハマカンゾウとキスゲの花形質は、それぞれ特定の送粉者の活動時間・視覚・嗅覚に、開花時間・花色・花香が協調的に適応したと考えられる。ハマカンゾウは、昼咲き種で、昼行性のアゲハチョウ類に送粉され、赤色を帯びたオレンジ色、香りなしという特徴がある。一方、キスゲは、夜咲き種で、夜行性のスズメガ類に送粉され、薄い黄色、強く甘い香りという特徴である。これまで、野外実験から、花色について送粉者の選好性が実証された。また、ハマカンゾウの花弁には、アントシアニン色素のdelphinidin 3-O-rutinosideが含まれ、キスゲの花弁には、アントシアニン色素は無いことが明らかになっていた。さらに、アントシアニン色素の有無について、1つの主要な遺伝子で支配されることを明らかにしていた。そこで、赤い花色色素であるアントシアニン色素の生合成経路の酵素遺伝子について、ハマカンゾウとキスゲのつぼみについて、発現量を比較した。 キスゲでは、F3’h (又は F3'5'h ), Dfr, Ans, 3gt, Rtの遺伝子について発現量が少ないことが明らかになった。さらに、花形質が分離しアントシアニン量が様々なF2雑種個体において、発現量の比較を行った。その結果、F3’h (又は F3'5'h ), Dfr, 3gtの遺伝子はアントシアニン量と相間があった。また、発現量について、遺伝子間の総当たりの相間を解析すると、F3’h (又は F3'5'h ), Dfr, 3gtの遺伝子の相間が高く、これらの発現が転写因子によって制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外実験において、送粉者の選好性が実証された花色について、その遺伝的基盤を明らかにすることができた。特に、花色が分離したF2雑種を用いて遺伝子の発現解析を行うことができた。ハマカンゾウとキスゲのアントシアニン色素の有無について、転写因子によって制御されている可能性が高いことを実証でした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、カロテノイド色素組成に関する遺伝子や花香に関する遺伝子について、形質が分離しているF2雑種集団における表現型との関連を調べ、花色・花香の違いに関する遺伝子を特定する。そして、送粉者の選好性に影響を及ぼすこれらの花色・花香の遺伝子について、キスゲ属における系統関係を解析し、複合適応形質の進化過程を明らかにできると期待される。
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Research Products
(4 results)