2011 Fiscal Year Annual Research Report
寄生植物コシオガマの寄生形質獲得に関わる遺伝子の同定
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
23128513
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉田 聡子 独立行政法人理化学研究所, 植物免疫研究グループ, 上級研究員 (20450421)
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Keywords | 寄生植物 / トランスクリプトーム / コシオガマ / 条件的寄生植物 / ストライガ / 次世代シーケンサー / 発現解析 |
Research Abstract |
多くの高等植物は自ら光合成により有機栄養をつくりだして生活するが、寄生植物は他の植物から栄養を奪って生育する特殊な生存戦略を獲得している。寄生植物は吸器と呼ばれる宿主への侵入器官を発達させ、宿主の根や茎に付着・侵入し、維管束系をつなげて栄養を吸収する。寄生植物の中でも、ハマウツボ科絶対寄生植物であるストライガやオロバンキは穀物や野菜に寄生するため、甚大な農業被害をもたらしている。しかし、植物寄生の分子メカニズムはまだほとんど分かっていない。本研究では、研究室内で扱いの容易な条件的寄生植物コシオガマの大規模トランスクリプトーム解析をおこない、寄生過程で発現する遺伝子を同定することを目的とする。 今年度は、寄生状態および独立栄養状態のコシオガマ植物組織からRNAを抽出し、cDNAライブラリーを作成し、illumina社HiSeq2000型シーケンサーと454型パイロシーケンサーを用いてシーケンスした。得られたショートリードから宿主として用いたイネの配列を除いた後に、アセンブリし、レファレンス配列を決定した。さらに、寄生状態と独立栄養状態における発現遺伝子配列をレファレンス配列にマップすることで、寄生時に特に発現が上昇している遺伝子の同定をおこなった。また、さらに初期に起こる遺伝子発現変化に着目するために、得られたレファレンス配列を用いてマイクロアレイ解析をおこなった。これらの遺伝子のコシオガマの寄生過程における経過的な遺伝子発現の変化をqRT-PCR法を用いて確かめた。今後は、得られた遺伝子を不活化するRNA干渉コンストラクトを作成し、コシオガマに形質転換してその遺伝子機能を類推する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、今年度中に吸器特異的な遺伝子を同定することを目的としているが、その目標はほぼ達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた遺伝子の詳細な発現解析およびRNAiを用いた機能解析をおこなう。問題点としては、遺伝子がファミリーを形成しており、RNAiによってある遺伝子の発現を抑制しても、重複する機能を持つ遺伝子によって機能相補が起こることが心配される点である。ファミリー遺伝子のアライメント図を作成し、重複する機能を持つ可能性のある遺伝子を同時に不活化できるコンストラクト構築が必要と考えている。
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