2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNAを基にした膠芽腫幹細胞ニッチを標的とした新規治療法の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Development of Novel Treatment Strategies Targeting Cancer Stem Cells |
Project/Area Number |
23130512
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
秀 拓一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (40421820)
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Keywords | 癌幹細胞 / 膠芽種 / ニッチ / マイクロRNA / 再発 |
Research Abstract |
膠芽腫は治療抵抗性で、手術後に放射線・化学治療を行ない、画像上腫瘍が消失していても、多くの場合1年以内に再発する。腫瘍摘出腔周囲からの再発が300例中285例(95%)(自検例)と圧倒的に多く、これは膠腫瘍境界部に治療抵抗性で再発の原因となる膠芽腫幹細胞やニッチが存在することを示唆する。 遺伝子異常が蓄積した膠芽腫を克服するためには、再発の原因となる膠芽腫幹細胞と膠芽腫ニッチを攻撃する必要があり、複数の遺伝子を制御しているmiRNAは治療標的として大変有効と考えられる。そこで、miRNAを利用した膠芽腫の新たな治療法の創出が本研究の目的である。 我々の熊本大学脳神経外科は日本有数の膠芽腫の手術件数があり、多数の臨床検体と臨床情報を保有している。膠芽腫手術時に腫瘍中心部、境界部、辺縁部(正常部)の3ヵ所から組織を採取し、それぞれの半分の組織で病理学的検討を行なった後、残り半分の新鮮凍結組織からmiRNAを精製する計画とした。実際、腫瘍本体として採取したところが壊死組織であったり、辺縁部として採取した組織が腫瘍を大部分含んでいたこともあり、病理学的確認後にmiRNAを精製することは大変重要であった。組織採取が正確に行なわれた6症例においてmiRNAを精製した。またその中の3例においては病理診断を行なったホルマリン固定パラフィン包埋切片から腫瘍中心部、境界部、辺縁部を切り出しmiRNAを精製した。精製したmiRNAはmiRNAアレイを使用し解析を行ない、新鮮凍結組織とパラフィン包埋組織の両者において、境界部に特異的に高発現する4個と発現低下する4個のmiRNAを見出した。高発現するmiRNAはこれまで腫瘍増殖抑制に働くと報告されているものや血管新生に関与するものが含まれていた。発現低下するもにはこれまで機能解析結果が報告されていないものが3個含まれていた。これらについてはqPCRで発現を確認し、発現誘導およびノックダウン実験などにより機能解析を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の実験計画は、正確にサンプリングした組織からのmiRNA精製とアレイ解析であった。新鮮凍結組織とパラフィン包埋組織を病理学的に検討した後にmiRNA精製を行ない、合計24サンプルを用いたアレイ解析まで終了した。サンプリングは正確であり、アレイで得られたデータの信頼性は高いと思われる。この解析結果から高発現するmiRNA4個と発現低下するもの4個を見出すことができ、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
qPCRでマイクロアレイから得られたデータを確認し、機能解析を開始する。 樹立した膠芽腫幹細胞株におけるこれらの標的miRNAの発現を検討する。 それらの細胞を用いて過剰発現とノックダウンの実験を行ない、増殖能、移動能、分化能などin vitroでの検討を行なう。次にスライスカルチャーを用いた実験を行ない、さらにマウス移植モデルを用いたin vivoの実験での検討へと進めて行く予定である。
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