2011 Fiscal Year Annual Research Report
染色体ストレス応答におけるクロマチンリモデリング因子の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
23131505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石合 正道 京都大学, 放射線生物研究センター, 准教授 (90298844)
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Keywords | クロマチン / DNA修復 / 癌 / シグナル伝達 / 蛋白質 |
Research Abstract |
申請者が研究してきた遺伝病「ファンコニ貧血(FA)」の原因遺伝子群の構成するFA経路は、DNAクロスリンク(ICL)修復と染色体ストレス応答に必須の役割を果たし、発がんや早期老化、幹細胞不全などの重篤な疾患状態の原因となるため、医学的に重要な研究課題である。ICL修復には、FA経路のみならず、DNA組換え修復、損傷乗越え複製、ヌクレオチド除去修復、チェックポイント応答機構などの分子機構が密接かつ機能的にカップリングする必要がある。我々は、FA経路を中心としたICL修復とクロマチン制御因子のカップリングの可能性を想定した。 本研究では、以下の2つの課題を設定した。1)FA経路の中心タンパク質FANCD2のヒストンシャペロン活性変異体の作製を行い、その活性の本質的役割を明らかにする。2)従来FAとの関連が指摘されているクロマチンリモデリング複合体Swi/SnfとFA経路との機能連携の可能性ついて解析する。 1)の研究課題では、FANCD2のヒストンシャペロン活性について、欠失変異体を用いた解析から、ヒストン結合領域をFANCD2のC末端付近に同定した。さらに、このC末端部分の中、に種を超えて保存された領域を見いだした。加えて、その中でも特に保存性の高いアミノ酸残基に着目し、複数の置換変異体を作製、解析した。その中の1つは、ヒストン結合能やin vitroのヌクレオソーム・アセンブリー活性が著減しており、現在、その変異体についてさらに解析中である。 次に2)の課題では、FA経路分子FANCAとSwi/Snf複合体のATP分解サブユニットの1つBrg1との会合が報告されており、また我々自身,FANCD2の会合分子候補としてコアサブユニットであるSNF5を見いだしたことから、FA経路とSwi/Snf複合体に関連性について解析した。Brg1とは異なるSwi/SnfのATP分解サブユニットであるBlmを加え、yeast two-hybrid法を用いて、Brg1,BlmSNF5とFA経路分子との相互作用を網羅的に検討した。既存の分子間の相互作用に加え、新規の相互作用を複数見いだしており、さらに詳細に解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した平成23年度の研究計画のうち、1)FANCD2のヒストンシャペロン活性については、首尾よく狙い通りの置換変異体の分離に成功した。当初の計画以上に進展していると言ってよい状況である。計画2)については交付申請書の研究計画では、Swi/Snf複合体の欠損細胞の作製・解析としていたが、その前提となるSwi/Snf複合体とFA経路の相互作用の全貌を把握する実験が未実施だったため、研究内容を上のように変更した。申請書の「研究目的」に照らすと達成度は、おおむね順調に進展していると言える。以上を総合的に考え、(2)と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上の研究課題1)については、現在の方策を継続することで目的は達成されると予想される。本年度の研究で同定した変異体の解析をさらに進めるとともに、同様の手法で新たな変異体の探索を行っていく。2)の課題についても、本年度の研究計画の修正により新たな知見が得られおり、この方策でさらに解析を進める。
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