2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム切断修復におけるクロマチン構造の役割
Publicly Offered Research
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
23131511
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
足立 典隆 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (30264675)
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Keywords | ゲノム切断修復 / クロマチン構造 / ノックアウト |
Research Abstract |
本研究では、普遍的な細胞内クロマチン制御機構の解明を目指した「次世代DNA修復研究」の一環として、クロマチン構造変換・維持やDNA二本鎖切断修復に重要な役割を果たすヒト遺伝子のノックアウト細胞の作製と解析を行うことで、クロマチン構造(特にヘテロクロマチン形成や転写抑制)の変化が及ぼすゲノム安定性(特にDNA損傷/変異誘発率や反復配列の安定性)や二本鎖切断修復機構への影響を明らかにし、最終的には、DNA損傷(ゲノム不安定化)とクロマチン構造異常との相互関係についての理解を深めることを目標とする。今年度はまず、我々がこれまで開発してきたヒト遺伝子ノックアウト系を利用して、クロマチン構造維持に関わる因子(NAD+依存性脱アセチル化酵素、転写コリプレッサーKAP1、HP1等)の遺伝子破壊株の作製を進めた。また、これまでに作製したDNA二本鎖切断修復の変異株の表現型解析をさらに詳細に行った。その結果、各種NHEJ欠損株がそれぞれ異なる表現型を示すことや、53BP1とArtemisが共にNHEJ経路から他修復経路へのスイッチングに作用しているという興味深い可能性を示すことができた。また、作製した変異株における自発的DNA損傷の変化やHDAC阻害剤感受性についても解析を行った。さらに、トポイソメラーゼ阻害剤などの抗癌剤への感受性の変化を調べることで、変異株におけるDNA修復能の解析を行った。一方、ゲノム上のさまざまな部位に1-Scel認識部位を含む組換え基質を導入(ノックイン)した細胞株を作製していくための準備を進めた。これは、各細胞株のさまざまな部位に生じた二本鎖切断の修復効率やその特性を解析していく上で重要なツールとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究目的、すなわちDNA損傷とクロマチン構造異常の関連の解明に向け、初年度の計画の多くを遂行できた。特に、クロマチン維持や二本鎖切断修復に関わるヒト遺伝子のノックアウト細胞の作製と解析を概ね順調に進行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関しては、大きなインパクトのある学術論文を早く発表できるよう努めていきたい。これに加え、新学術領域研究という国内グループ研究の最大のメリットである情報交換や共同研究を積極的に行っていきたい。なお、研究計画の変更の必要性あるいは研究を遂行する上での大きな問題点は特に存在しない。
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