2011 Fiscal Year Annual Research Report
組換えによるテロメア維持とクロマチン動態の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
23131517
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鍋谷 彰 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40334495)
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Keywords | テロメア / ALT機構 / 相同組換え |
Research Abstract |
がん細胞の中には、テロメレースに依らない機構によりテロメアを伸長するものがある。ALT機構と呼ばれるこの維持機構には相同組換えが関与していることが示唆されているが、その分子機構は明らかになっていない。本課題では、ALT機構の解明のために、ALT細胞におけるテロメアDNA代謝の検出系を確立すること、その代謝に関わるクロマチンタンパク質の関与を検討することを目的としている。テロメアDNA代謝の検出をするため、これまで特定の染色体末端テロメアにタグ配列の挿入を持つALT細胞を作出している。本年度は、このU2-OS由来の細胞を用い、タグ付きテロメアDNAの構造と安定性について検討した。 タグ付きテロメアDNAの構造は、細胞からDNAを調製し、サザンハイブリダイゼーション法により検出した。このタグ配列を持つテロメアは約1 kbと短い配列であるが、継代培養を経ても欠失などの大きな構造変化、そして細胞自体の増殖が低下するなどの影響はみられなかった。またALT細胞のテロメアで観察されるような環状DNAも出現せず、染色体末端のDNAとして安定に存在していた。以上の結果から、このタグ付きのテロメアは、ALT機構により維持されているモデルとして使用できることが明らかとなった。更にこのテロメアDNA長の変化を詳細に解析するために、30世代以上の継代培養後にクローンを再分離して、それぞれのテロメアDNAの長さを解析した。35クローンのテロメアを調べた結果、9クローンでは元の長さである約1 kbよりも長いテロメアDNAを末端に持っていた。これはタグ付きテロメアDNAがALT機構による伸長反応の基質となること、すなわち、このテロメアを持つ細胞株はALT機構を解析する上で有用なモデルであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、まず作成した細胞株のタグ付きテロメアDNAが、ALT機構の解析に適した実験系を提供するかを検討した。ここでは、作出した細胞のタグ付きテロメアDNAが、約1 kbとALT細胞のテロメアDNAとしては異例なほど短いことが鍵となった。この短いテロメアDNAはALT機構により伸長反応が起こることが、クローン解析により明らかとなった。一般的に長いテロメア配列を持つALT細胞では、このような詳細な検討が困難であった。本研究で使用した細胞が、実験系として有用であることを示すことができたのは重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
特定の染色体末端テロメアにタグ配列を付けたALT細胞株を引き続き使用する。これまでテロメア長の変化を、クローンの単離という確実ながら時間のかかる方法により調べた。今後はテロメア長の変化を、より短い時間で検出する方法を検討し、さらにはハイスループット解析の対象になるような予備的検討を行う。具体的には、テロメアの伸長過程がより高頻度で起こることが期待できる末端のテロメアDNAが更に短い細胞株を解析に用いる。
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