2011 Fiscal Year Annual Research Report
HLA遺伝子領域の多様性と自然選択の役割
Publicly Offered Research
Project Area | HLA polymorphism, disease and evolution |
Project/Area Number |
23133502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大橋 順 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80301141)
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Keywords | HLA / 自然選択 / ハプロタイプ / 抗原ペプチド / 分子進化 |
Research Abstract |
(1)HLAクラスI遺伝子とマラリア抗原との多型間相互作用解析 タイ北西部に居住し、熱帯熱マラリアに感染した熱帯熱マラリア患者の感染マラリア原虫のTRAP遺伝子アミノ酸多型(非同義SNP)のスクリーニングを行った。TRAPはスポロゾイト期に発現しているマラリア抗原であり、肝臓感染(マラリア感染の初期段階)に関与しており、HLAクラスI分子によって認識されていると考えられている。今後は、検出された非同義SNPとクラスI遺伝子多型との相互作用を遺伝統計学的に評価する予定である。 (2)HLA遺伝子多型とKIR遺伝子多型との相互作用がマラリア重症化に与える影響の検討 タイ北西部に居住し、熱帯熱マラリアに感染した熱帯熱マラリア患者477名を対象に、HLA遺伝子多型とKIR遺伝子多型のタイピングを行った。その結果、HLA遺伝子多型(HLA-C1)とKIR遺伝子多型(KIR2DL3)とを同時に保有することが、熱帯熱マラリア重症化(脳性マラリア)と有意に関連する(OR=3.14,95%CI1.52-6.48,P=0.00079)ことを報告した。また、熱帯熱マラリアの流行地域においては、HLA-C1とKIR2DL3とを組み合わせた頻度が低いことを見いだした。統計解析によって、低い組合せ頻度はマラリア感染による負の自然選択によってもたらされた可能性があることを指摘した。 (3)統計学的自然選択検出手法の開発 最近の自然選択の痕跡を検出する統計解析手法(REHH法)に改良を加え、より高い検出力が期待される手法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の中で、もっとも遺伝子タイピングが困難であるHLA-A,-B,-C遺伝子多型とKIR遺伝子多型のタイピングが終了し、その成果を学術論文として報告できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
HLA遺伝子多型とマラリア原虫抗原多型との相互作用がマラリア感染・重症化に与える影響については、H23年度のスクリーニングによって見いだされたマラリア抗原遺伝子TRAP多型のタイピングを進める。また、デング出血熱についても、KIR遺伝子多型とHLA遺伝子多型との組合せが重症化に与える影響について検討する。さらに、HLA対立遺伝子に対し、日本人集団(東アジア人集団)の祖先で比較的最近作用した正の自然選択について検証する。
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