2011 Fiscal Year Annual Research Report
HLA結合ペプチドの標的細胞内デリバリー制御システムの構築
Publicly Offered Research
Project Area | HLA polymorphism, disease and evolution |
Project/Area Number |
23133506
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
河野 健司 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (90215187)
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Keywords | ナノ医療 / 薬物送達 / ナノカプセル / ワクチン |
Research Abstract |
本年度は、初期エンドソーム、後期エンドソームおよびリソソーム内の酸性pHに鋭敏に不安定化するリポソームの作製を行った。まず、メチルグルタル酸無水物およびシクロヘキサンジカルボン酸無水物を、ポリグリシドール(平均重合度8)-リン脂質に反応させることで、2種類のpH応答性ポリマー脂質、MGlu8-PEおよびCHex8-PEを合成し、これらを含んだリポソームを作製した。これらのpH応答性高分子脂質を組み込んだリポソームは中性条件下では安定であったが、酸性条件下で不安定化し、内包物を放出した。特に疎水性度が高いCHex8-PE含有リポソームは微弱酸性において劇的な応答を示した。これらのpH応答性ポリマー脂質含有リポソームに抗原としてオボアルブミン(OVA)を封入し、これらをマウスに皮下投与することで免疫誘導機能を評価した。その結果、フリーのOVAの投与やOVA内封未修飾リポソームの投与時に比べて、これらのpH応答性ポリマー脂質リポソームを用いた場合に顕著に効果的なOVA特異的な免疫を誘導できることがわかった。特に、より鋭敏なpH応答性を示すCHex8-PE修飾リポソームを投与した場合、OVA発現細胞を完全に拒絶したことから、このリポソームが強力な免疫誘導能を有することが明らかになった。これらのリポソームの癌免疫治療への応用の可能性を検討するために、OVA発現腫瘍細胞を用いた担癌マウスに種々のOVA封入リポソームを投与し、その腫瘍縮退効果を調べたところ、これらのpH応答性ポリマー脂質修飾リポソームは、効果的に腫瘍縮退効果を示した。特に、鋭敏なpH応答性を発現したCHex8-PE含有リポソームは最も強力に腫瘍縮退を誘起したことから、抗原デリバリーシステムとして有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鋭敏なpH応答性を発現するリポソームを作製することに成功した。また、これらのリポソームが抗原デリバリーシステムとして有用であることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、これまでに作製したpH応答性ポリマー脂質含有リポソームに樹状細胞特異的なリガンドを導入することで、標的オルガネラへのデリバリー機能におよぼす、リガンドの効果について検討する。リガンドとしてトランスフェリン、マンナン、抗体Fcなどの免疫関連細胞のレセプターと特異的に結合する分子をリポソームに組み込むことで、その標的オルガネラへのデリバリー機能の向上を実現する。最適化された組成とリガンドをもつpH応答性リポソームを用いてHLA結合ペプチドのデリバリー制御を実現する。本領域研究の研究者との連携によって、本研究で作製された、HLA結合ペプチドなどの化学物質を内包したpH応答性リポソームによる免疫関連疾患の治療の可能性を探る。
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Research Products
(11 results)