2011 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞でドライバー変異を起こしている遺伝子の同定法の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
23134509
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
横田 淳 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (10191503)
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Keywords | 肺がん / ゲノム / 変異 / 発現プロファイル / 融合遺伝子 |
Research Abstract |
ヒトがんの発生あるいは悪性化に関与するドライバー変異を起こしている遺伝子の同定法を確立するために、肺腺がんを対象として、同一症例の発現プロファイル解析、ゲノムコピー数解析、全RNAシークエンシング、全エクソームシークエンシングを行った。これらの結果を組み合わせて、今年度は以下の知見を得た。 1.肺腺がん226例の発現プロファイル解析により、ALK変異型腺がんではALK遺伝子に加えてGRIN2A遺伝子が発現上昇していることを見い出した。さらに、EGFR/KRS/ALKに変異のない腺がんは2群に大別され、極めて予後の悪い群はDEPDC1遺伝子を含む9つの遺伝子の発現で識別できることを明らかにした。 2.詳細な非がん細胞のゲノムコピー数解析を行うことにより、以前からがん抑制遺伝子として報告されていたPARK2遺伝子は胚細胞レベルで1段階目のゲノム内欠失が起こっており、細胞株でしばしば見られる2段階目の変化は臨床検体では全く起こっていないことを明らかにした。 3.EGFR/KRS/ALKに変異のない腺がんを中心に行った全RNAシークエンシング解析により、10番染色体の再構成によって形成されたKIF5B-RET融合遺伝子が全腺がんの約2%に存在し、この融合遺伝子を持つ肺腺がんの増殖はRETチロシンキナーゼの阻害剤によって抑制されることを明らかにした。 これらの研究は第3次対がん総合戦略研究によって収集された臨床検体を用いて行われ、解析は新学術領域研究の代表者や他の分担研究者の協力を得て行われた。近年のゲノム網羅的な解析から得られる膨大な情報を解析経験の豊富な研究者と共同で解析することによって得られた研究成果である。来年度は更に全エクソームシークエンシングの結果を合わせて、がん細胞でドライバー変異を起こしている遺伝子の同定法を確立していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の計画以上に多くの研究成果が得られた。その大きな理由は、この研究領域に班員として参画できたことにより、バイオインフォーマティクスや網羅的なゲノム解析を専門とするこの領域の多くの研究者との共同研究を速やかに進行させられたことにある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も現在の研究方針で研究を推進するが、現在、取り組んでいるエクソームシークエンシングからはより多くのゲノム情報が得られるので、バイオインフォーマティクスを専門とする研究者と更なる共同研究を展開して、真にドライバー変異を起こしている遺伝子の同定法を確立して行きたい。
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Research Products
(6 results)