2011 Fiscal Year Annual Research Report
漆質感認知に寄与する時空間視覚情報特性解析 ―「漆の質感を見る技」の解明―
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative studies of neural mechanisms and advanced information technologies for perception of material and surface qualities |
Project/Area Number |
23135520
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
大谷 芳夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00192518)
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Keywords | 実験系心理学 / 視覚心理学 / 質感認知 |
Research Abstract |
本年度は、第1の研究項目である「漆板への映り込み画像の動きが質感認知にどのように寄与するか」を中心に研究を行った。まず、本研究全体で使用する、艶の異なる実験用漆板資料を作成した。艶漆と艶なし漆の配合比率を変えて、10段階の艶を持つ資料10枚と、鏡面仕上げを施した「蝋色仕上げ」の資料1枚を作成した。当初は、手塗りの資料を使用する予定で作成を行ったが、刷毛目が資料毎に異なっており、それが艶弁別の手がかりとなる可能性が考えられたので、作成手法を吹付塗装に変更し刷毛目のない資料を再度作成した。 この資料を用いて、漆工芸熟練者及び非熟練者を対象として、見かけの艶の評価実験と眼球運動計測を実施した。また、各資料について変角分光計測を行い、表面反射特性を測定した。 点光源下で実施した、非熟練者に関するMagnitude estimation法による艶の評価実験では、見かけの艶は、艶漆の配合比率の増加と共に高くなるが、70%程度以上の比率では評価値が飽和する傾向が見られたが、これは、変革分光計測による反射光強度の傾向と一致するものであった。同じく点光源下で実施した、熟練者・非熟練者を対象とした艶の再認実験では、熟練者は非熟練者に比べて、艶漆の配合比率が低い資料に対し艶の程度をより高く評価する傾向にあることが示された。また、眼球運動計測では、見かけの艶を評価する際の眼球運動は、熟練者・非熟練者で大きく異なる傾向を示すことが明らかとなった。具体的には、非熟練者は素早く漆板資料を動かし、映り込み画像(点光源像)を高速で追視するのに対し、熟練者は資料をゆっくりと動かし、光源像から離れた位置を低速で追視するか、或いは光源の動きとは異なる経路で注視点を動かす傾向が見られた。以上の結果から、熟練者と非熟練者では、見かけの艶の評価し際し、異なる視覚情報を手がかりにしていることが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年間で実施予定の2つの研究項目のうち、第1項目の「漆板へお写り込み画像の動きが質感認知にどのように寄与するか」に関して、実験システム・刺激材料の作成は完了し、実験については計画の80%程度が終了している。 また、心理学実験・眼球運動測定のデータ解析も進んでいるため、計画は順調に達成されていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度実施の実験により取得した眼球運動データの解析を進めるとともに、第2の研究項目の「質感認知に寄与する画像情報の空間特性の解明」を開始する。本年度は、連携研究者である漆工芸熟練者を対象とした心理学実験が、(多忙のため)熟練者の時間調整が難しく、進捗管理が難しいケースがあった。今年度は、長期(半年程度)にわたる実験スケジュールを予め作成し、確実に実験を行う体制を整える予定である。
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Research Products
(2 results)