2011 Fiscal Year Annual Research Report
質感言語表現における多感覚相互作用:MEGによる脳内表象の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative studies of neural mechanisms and advanced information technologies for perception of material and surface qualities |
Project/Area Number |
23135526
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
檀 一平太 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20399380)
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Keywords | オノマトペ / MEG / レジストレーション / MRI / 脳内表象 / 質感語 |
Research Abstract |
本研究の目的は、質感の言語表現の脳内表象を多感覚相互作用の観点から明らかにすることである。このため、オノマトペ(擬音・擬態語)質感語の脳内表象の基本原理を、MEG(脳磁計)による脳機能イメージング法を用い、解明を試みる。解析の対象としては、既に日本語において体系化がなされているテクスチャー表現について、脳内表象の解析を行なう。これらの語句の脳内処理には、基本的な言語領域の活動に加えて、それぞれの語と意味的に関連する聴覚領域、視覚領域、体性感覚領域の活性化が伴うと考えられる。そこで、それぞれの意味する感覚関連領域の活動を時間的に詳細に検出するためMEGを用いた解析を行う。 ところが、本研究の推進に際して、技術的な問題が生じた。MEGによる脳機能データの時空間解析において、当初、MRIを利用したレジストレーションを用いる予定であったが、震災の影響により、MRIによる画像データ取得が困難となった。被験者のMRI画像なしでのMEG信号源推定は困難を要する。この問題を解消するために、任意のMRI画像を被験者の脳機能データが存在する実世界座標系にレジストレーションする「リバースレジストレーション法」を考案した。この方法では、被験者以外のヒト脳構造画像からなる参照脳データベースを用意する。次に、参照脳データベースから任意の参照脳を取り出す。それを被験者の頭部形状に合致するように変形させる。ただし、この場合、被験者の脳構造がたまたま取り出した変形参照脳と一致する確率は必ずしも高くない。そこで、複数の参照脳を取り出し、これらを次々にすり替えていく。この結果、被験者の脳機能データが任意の複数参照脳上に表現されることになり、被験者のMRIが入手困難な場合でも、MEGデータの信号源推定が可能となる。本質的にはMRIの取得が望ましくはあるが、次善の策として、極めて有用な手法が誕生した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通りの進行状況とはなっていないが、副次的に極めて重要な成果が得られたため、総合的に判断すると概ね順調な進展と言える。また、当初計画よりも効率的と考えられる実験系も立ち上がりつつあり、期間内での成果の上積みが期待できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
解析の対象としては、既に日本語において体系化がなされているテクスチャー表現について、脳内表象の解析を行なう予定であったが、これらのテクスチャー語は「からっ」、「霜降り状の」、「ジューシー」といったように語長による統制が困難であるという問題が生じた。このため、「さくさく」、「ぱりぱり」といったABAB型のオノマトペに的を絞ることにした。ABAB型のオノマトペは日本語に頻発する。この要因は、1、2モーラ目がプライムとなって、3、4モーラ目の反復によって、ABで表現される語感の印象が高まるためと考えられる。そこでまず、3、4モーラ目の繰り返しによって、特異的な脳応答が生じるかどうかを検証する。さらに、このプライミング効果が単なる音韻の繰り返しによるものか、それとも、ABが内含する意味に依存した現象であるかを検討する。また、テクスチャー語のみとした場合、刺激語の範囲が狭まるという問題があったため、日本語の語彙全体からの抽出へと対象を変更した
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Research Products
(1 results)