2011 Fiscal Year Annual Research Report
腎排泄型カチオン性小分子の多階層的生体挙動制御解析
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
23136507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
桂 敏也 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10283615)
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Keywords | 薬学 / 薬物動態学 / トランスポータ / 腎臓 / シミュレーション |
Research Abstract |
Multidrug and toxin extrusion(MATE)は、尿細管上皮細胞の刷子縁膜におけるカチオン性小分子の排出に主要なトランスポータであること、さらに他の臓器においても発現が認められることが明らかにされてきた。本研究ではMate1ノックアウトマウスを用いて糖尿病治療薬メトホルミンの体内動態および副作用発現の解析を行った。Mate1ノックアウトマウスにおいては、メトホルミンの腎排泄が低下し、腎臓中濃度および血中濃度が有意に上昇した。さらに、薬効発現臓器である肝臓、筋肉におけるメトホルミンの蓄積が顕著に上昇した。また、心臓においても上昇が観察された。薬力学的な解析により、Mate1ノックアウトマウスでは乳酸アシドーシスの危険性が高まることを明らかにした。他方、アシドーシス時における薬物動態解析により、カチオン性薬物の尿細管分泌への影響は小さいものの、有機アニオントランスポータの発現低下による薬物排泄能の低下が観察された。また、新生児の発達過程におけるトランスポータの発現および機能変化についても明示した。次に、シミュレーションソフトPhysioDesignerを用いて薬物動態モデルを構築し、シミュレーションを行った。その結果、Mate1ノックアウトマウスにおけるメトホルミンの血中濃度の上昇を再現するためには、腎臓から血液に戻るBack fluxが受動拡散より相対的に大きい値を持つことが必要であると考えられた。以上、in vivo動態解析によってMATE1機能低下による糖尿病治療薬メトホルミンの副作用発現とトランスポータの機能変動機構に関する新知見を得た。また、腎排泄型薬物の体内動態シミュレーションを可能とするモデルを構築した。今後、薬効臓器と排泄臓器を合わせた薬物動態シミュレーションによって、カチオン性薬物の生体挙動制御および薬効発現を実装する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mate1ノックアウトマウスを用いた動態解析およびin silico動態モデルの構築を完了し、メトホルミンをプローブドラックとした薬物動態シミュレーションを行うという目的をおおむね達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓での薬物濃度上昇が観察されたことから、心臓で作用するカチオン性薬物の薬物動態学的、薬力学的検討を進める。さらに、構築したモデルを用いて、MATEの機能変動に伴う組織中薬物濃度変化や薬効発現についてシミュレーションを行い、1分子の機能変動に伴う薬物の多階層的生体挙動制御解析を進める。
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