2011 Fiscal Year Annual Research Report
ストイキオメトリーの多様性を考慮に入れた新しい心筋カリウムチャネルモデルの確立
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Integrative Multi-level Systems Biology and its Applications |
Project/Area Number |
23136518
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
中條 浩一 生理学研究所, 分子生理研究系, 助教 (80390699)
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Keywords | イオンチャネル / KCNQ1 / KCNE1 / 複合体 / ストイキオメトリー / モデル / 不整脈 / イメージング |
Research Abstract |
KCNQ1とKCNE1のイオンチャネル複合体の性質をより詳細に調べる目的で、KCNQ1とKCNE1のタンデムコンストラクトにさまざまな長さのリンカーを導入した。KCNE1-KCNQ1タンデムコンストラクトにおいては4:4のストイキオメトリーを持つイオンチャネル複合体が構成されると予想されるが、リンカーサイズが短いとき(18~50アミノ酸長)の時にチャネルは非常に開きにくく(活性化には高い脱分極パルスが必要)、リンカーの長さが長くなるにつれて活性化の閾値も徐々に過分極側にシフトしていった。リンカーが長いときには、KCNQ1に結合していないKCNE1が存在し、それによってKCNQ1チャネルが若干開きやすくなったのだと解釈できる。すなわちKCNQ1とKCNE1が細胞膜上で結合解離を起こしうるという間接的な証拠になると考えている。 一方4:2のストイキオメトリーを持つと考えられるKCNE1-KCNQ1-KCNQ1タンデムコンストラクトにおいては、リンカーの長さを伸ばすほど、活性化のキネティクスに遅延が見られた。KCNQ1-KCNE1チャネルの活性化のキネティクスは二重指数関数でフィットでき、3秒程度の時定数を持つ速いコンポーネントと、20秒以上の遅いコンポーネントに大別できる。そしてリンカーが長くなればなるほど、遅いコンポーネントの割合が増加していくことがわかった。現在、遅いコンポーネントのキネティクスは細胞膜上でのサブユニット同士の結合解離に由来するものであるとの仮説を立て、検証中である。 また4:1のストイキオメトリーを持つと考えられるKCNE1-KCNQ1-KCNQ1-KCNQ1-KCNQ1のコンストラクトも作成し、その性質を電気生理学的に解析した。非常に以外なことに、4:1チャネルのキネティクスは4:2チャネルのキネティクスに比べて大きな差異は認められなかった。今後Kinetic Modelを考える上で重要な情報になると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画している一分子レベルでの観察による結合解離の直接観察についてはやや遅れているが、タンデムコンストラクトを用いたアプローチではリンカーの長さによって電流のキネティクスが変化することを見出すなど、一定の成果は得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
一分子イメージングによるストイキオメトリーの変化の検出の実験をすすめていく。やや遅れていることを踏まえて、KCNQ1とKCNE1の実験に重点を置き、目的であるKinetic Modelの構築を目指す。当初の計画には組み込まれていなかったタンデムコンストラクトを用いることで、Kinetic Modelの構築や一分子イメージングの評価がやりやすくなったと考えている。
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