2023 Fiscal Year Annual Research Report
光エネルギー変換における動的エキシトンの基礎機構の理論的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
23H03942
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 宏之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (60390655)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 励起子 / 電荷分離 / 量子化学 / 量子ダイナミックス / 有機系太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機薄膜太陽電池の効率向上のために、ドナー/アクセプター界面で最小限のバンドオフセットで励起子が静電障壁を超えて電子と正孔へ電荷分離する機構を理解することが必要不可欠である。高効率なアクセプターとしてY6系が開発されているが、分子構造が光電変換機構に与える作用機序は未解明である。Y6はフラーレンと異なり分子内分極を持つため、その静電相互作用が電子/正孔解離のポテンシャルに影響する可能性がある。 本研究では、ドナー分子(PM6)とY6の界面における電子/正孔解離ポテンシャルをQM/MM計算で理論解析し、構造の乱れた界面より結晶性の高いバルク部でLUMOレベルが分子の極性によって安定化される効果を明らかにした。また、電子-正孔間ポテンシャルと分子間の電荷移動積分を考慮して多分子に非局在した電子状態を解析し、界面のポテンシャルカスケードが電子-正孔の平均距離を広げる効果が見られた。以上の量子化学的解析に基づいてモデルハミルトニアンを決定し、以前のポリマー/フラーレン界面の電荷分離の解析と同様に、量子ダイナミックス計算によってPM6/Y6界面での励起子の電荷分離を解析した。電荷の非局在やポテンシャルカスケードが電子-正孔解離障壁を下げることで、比較的小さいバンドオフセット(<0.1 eV)でもサブピコ秒の効率的な電荷分離が起こり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有機薄膜太陽電池の効率向上のために、ドナー/アクセプター界面で最小限のバンドオフセットで励起子が静電障壁を超えて電子と正孔へ電荷分離する機構を理解することが必要不可欠である。高効率なアクセプターとしてY6系が開発されているが、分子構造が光電変換機構に与える作用機序は未解明である。本研究では、非フラーレン有機薄膜太陽電池の励起子電荷分離機構の理論研究に取り組み、エネルギー変換効率に関わる重要な学理を見出している。このため、本学術変革領域の目的である動的エキシトンの新しい学理の構築に貢献しており、現在は論文発表の準備を進めている。このため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、有機薄膜太陽電池の光電変換機構の理論研究を進める。また、学術変革「動的エキシトン」における共同研究に取り組む。非フラーレン有機薄膜太陽電池の高効率な電子アクセプター分子であるY6系について励起子の電荷分離機構の解析を進め、論文として発表する。
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