2023 Fiscal Year Annual Research Report
Development of circularly accumulated pi-electron systems for dynamic-exciton analyses
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamic Exciton: Emerging Science and Innovation |
Project/Area Number |
23H03964
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高瀬 雅祥 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (90516121)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 環状集積型π電子系 / 芳香族求核置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、環状に集積したπ電子系化合物を構築し、その構造に起因する機能解明を目的としている。初年度は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンの全ての外周部にカルバゾールを置換したカルバゾールオリゴマーを合成した。また参照物質として、ベンゼンの外周部に連続する1~5個のカルバゾールを置換した化合物の合成も行った。合成した化合物の単結晶構造、吸収・発光スペクトル、電気化学測定を行った。ナフタレンを中心部に有するカルバゾール8量体において、用いる良溶媒の種類によって、結晶の色や分子構造(配座)が異なる単結晶が得られた。外周部全てにカルバゾールを置換した化合物の電気化学測定から、可逆な酸化応答性が観測され、ジカチオン種のNMR測定を試みたが、これまでに明確なシグナルは観測されていない。これらの結果から、カルバゾール部位の自由度が高く、意図した配座に固定化されていないことが考えられた。一方、レーザー強度を変えた過渡吸収測定の結果、高エネルギー照射下において一重項消滅が観測された。カロバゾー間での励起エネルギー移動を示している。さらに、カルバゾールの代わりに不斉点を有するペリレンジイミド誘導体をブレードとするプロペラ型分子の合成にも成功し、CD、CPL測定の結果、不斉点のキラリティーに応じたプロペラキラリティーの発現を観測することができた。興味深いことに、溶媒に応じてキラリティーが反転すると言った現象が観測され、その理由について領域内研究者との共同研究により計算機を用いた考察を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
標的化合物群の合成に成功し、単結晶構造解析や吸収・発光スペクトル、電気化学測定などの基礎物性評価を行うことができている。さらに、領域内研究者との共同研究も進めつつある事から、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で目的としている、複数の環状に集積したπ電子系化合物の合成に成功している。プロペラキラリティーの発現や溶媒に応じたキラリティーの反転など、興味深い現象が観測されてはいるものの、ブレードの数や配座等に起因した物性発現には至っていない。最終年度では、理論計算を用いた現象の理解を進めると共に、時間分解ESR測定などを通じて、励起三重項種の振る舞いについても調査を進める。また酸化種の物性調査を行うため、酸化滴定実験を行い、固体もしくは溶液状態で純粋な酸化種の生成を試みる。
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