2023 Fiscal Year Annual Research Report
Searching for "proto-nucleobases" in extraterrestrial materials and the elucidation of their formation mechanism
Publicly Offered Research
Project Area | Next Generation Astrochemistry: Reconstruction of the Science Based on Fundamental Molecular Processes |
Project/Area Number |
23H03980
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (00507535)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プロト核酸塩基 / 地球外物質 / 化学進化 / 生命の起源 / 遺伝物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表的な炭素質隕石であるマーチソン隕石の粉末を塩酸で煮出し,効率的なプロト核酸塩基の抽出を試みた。110℃の6M塩酸で12時間加熱後上澄みを回収し,陽イオン交換カラムクロマトグラフィ-で分画したのち,生成された抽出液を液体クロマトグラフ―超高分解能質量分析計で分析した。一般的な5種核酸塩基に加え,プリンやモノアミノプリン,ジアミノプリン類,メチルウラシル類,イソグアニンなど,プロト核酸塩基として提案されている窒素複素環化合物の存在が確認された。それらの濃度は隕石1gあたり0.5-93ngであった。これらの結果は,地球外物質中における普遍的なプロト核酸塩基候補の存在を強く示唆するものである。 小惑星ベヌーで回収されたサンプルの予備分析で,窒素を含む有機化合物が多いことがわかり,本来予定になかったサンプル(~18mg)が我々の分析チームに配分された。上記分析法を駆使し,ベヌーサンプル中からプリンやイソグアニンなど,プロト核酸塩基を含む多様な窒素複素環化合物を検出することに成功した。その濃度は主要核酸塩基と比べて高くなく,ベヌーサンプル中では比較的マイナーな化合物群であることが示唆された。ただし,今後より多くの試料を用いた分析で,その見解が変わる可能性があるので,今後の分析が重要となるだろう。 ヘキサメチレンテトラミンを材料とした小惑星環境を模擬する環境での加熱実験で,種々の窒素複素環化合物,およびそのアルキル置換体が検出された。詳細な構造解析には至っていないが,容易にそうした化合物が生成可能であることは,プロト核酸塩基候補が小惑星母天体中では豊富に存在することを強く期待させるものであり,実際の地球外物質中試料の分析結果との比較が今後不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では23年度中の分析は不可能と思われた小惑星ベヌーサンプルが配分され,大きな問題点なく分析が遂行できた一方で,炭素質分析や模擬実験物質,地球上のサンプルの網羅分析など予定通り完了できなかった点を踏まえて,総合的には順調だと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
小惑星ベヌーサンプルに含まれるプロト核酸塩基候補となりうる窒素複素環化合物を網羅的に解析する。さらに,24年夏以降に予定されているサンプル配分(~0.6g)の本番を見据え,分析環境の再確認,およびサンプル到着後の分析を効率的に遂行する。地球上天然物試料中プロト核酸塩基の分析にも着手し,地球上でのそれら化合物の分布に関する理解を深める。HMTやイエロースタッフ等加熱によるプロト核酸塩基生成実験を重点的に進める。
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