2023 Fiscal Year Annual Research Report
Dark Matter and Quantum Gravity
Publicly Offered Research
Project Area | What is dark matter? - Comprehensive study of the huge discovery space in dark matter |
Project/Area Number |
23H04007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野海 俊文 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30709308)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 量子重力 / スワンプランド / ブートストラップ / 宇宙検閲官仮説 / ブラックホール熱力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、暗黒物質模型の広大な理論空間を「量子重力との整合性」を手がかりに絞り込み、暗黒物質探査への指針を与えることである。 2023年度は、当該領域C01班と共同で、「散乱振幅のユニタリ性」の立場から暗黒物質模型と量子重力の整合性を議論した。暗黒セクターに軽いゲージ粒子が存在するとするダークゲージボソンシナリオにおける散乱振幅のユニタリ性を重力相互作用まで考慮して精査し、ダークゲージボソンの質量を含む不等式を量子重力の整合性条件として導出した。高エネルギーにおける重力散乱の「レッジェ化」に関するいくつかの仮定のもとではあるが、ダークゲージボソンの質量に対する理論的下限が得られる可能性を指摘した。また、得られた条件と近年提案されている様々な「スワンプランド条件」の関係も議論した。当該成果はarXiv論文として発表し、現在論文雑誌で査読中である。 当該論文を含む一連の研究を進めていくうちに、散乱振幅の整合性に基づいて理論を絞り込む「S行列ブートストラップ」を重力理論に応用する際の理論的課題も明らかになってきた。この課題解決に向けた研究を進めるのと並行して、S行列ブートストラップとは相補的な新たな手法の開発も進めた。特に、裸の特異点は存在しないとする「宇宙検閲官仮説」の暗黒物質研究への応用という着想を得た。「標準模型セクターの極限ブラックホールに暗黒物質を投げ込んだ際に裸の特異点が生成されない」ことを要求することで、「暗黒物質と標準模型粒子の相互作用」が満たすべき条件を解明しようというのがアイディアである。本年度は最初のステップとして、複数種類の保存電荷が存在する系において「宇宙検閲官仮説」の検証を行った。特に、量子補正を考慮しても、非極限ブラックホールに対しては宇宙検閲官仮説が成り立つことを示した。当該成果はarXiv論文として発表し、現在論文雑誌で査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に計画していたS行列ブートストラップに基づく「暗黒物質と量子重力の整合性」に関するC01班との共同研究が順調に進み、論文雑誌への投稿まで行えた。それと並行して模索していた新たな研究の方向性として「宇宙検閲官仮説の応用」という着想も得られ、それに関する最初の結果について論文を雑誌に投稿した。その他の関連論文も2編出版できたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2023年度に論文雑誌へ投稿した2編の論文の出版をまずは完了させる。それと並行して、S行列ブートストラップの重力理論への応用に関する基礎研究と宇宙論模型への応用、2023年度に新たに始めた「宇宙検閲官仮説の暗黒物質模型への応用」をメインで進めたい。いずれも一定の成果が見込まれるが、研究過程で困難が生じた場合には、2023年度に出版した「ブラックホール熱力学とスワンプランド条件の関係」に関する成果の暗黒物質模型への応用に方針転換することも検討する。
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