2023 Fiscal Year Annual Research Report
金テンプレート法による高密度環状π共役および多次元高密度空間共役システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Condensed Conjugation Molecular Physics and Chemistry: Revisiting "Electronic Conjugation" Leading to Innovative Physical Properties of Molecular Materials |
Project/Area Number |
23H04041
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
土戸 良高 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 助教 (00814344)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | シクロパラフェニレン / 金錯体 / 多段階酸化 / 芳香族性 / ロタキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 第一期の研究期間において,全てのベンゼン環にメトキシ基が2つ導入された新規シクロパラフェニレン誘導体を環成分に有するインターロック化合物([2]ロタキサン)の合成に成功した.本年度の研究では,ロタキサンの多段階酸化を詳細に検討した.具体的には,マジックブルーを酸化剤として用いてCPP部位を二電子酸化したところ,CPP部位の環内部に存在している軸分子のメチレンプロトンの1H NMRシグナルが-14 ppm以上まで大幅に高磁場シフトした.この現象は第一期の最後に予備的に発見していたが,本年度の研究においてこの特徴的なシフトの原因に関して,2次元NMRスペクトルや量子化学計算を含めて詳細な解析を行った.その結果,二電子酸化に付随してCPP部位がall-cis-[22]annulene型の環状共役(面内芳香族性)を形成し,これによってCPPの環内部に生じた環電流からの遮蔽効果に起因していることが明らかになった. 2) これまでに大環状金錯体(金テンプレート法)を経由することで,2 つの4,4’-ビフェニル骨格を硫黄硫で架橋したシクロファン型環状分子の合成に成功している.本年度の研究では,大環状金錯体の結合交換を利用した新しいCPP合成法(再組織化法)を利用することで,二種類のヘテロ元素(硫黄と窒素)が組み込まれたシクロファン型環状分子の合成に成功した. 3) 第一期から進めている領域内での共同研究を推進し,さらに本年度に新たに共同研究も始めた.そのうち幾つかの研究については顕著な成果が出つつあり,近日中に共著論文が出版される見込みである.これに加えて「高密度国内留学」制度を利用し,領域内の研究室の大学院生の受け入れおよび派遣を行うなど,領域内での研究交流の活性化に貢献した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ロタキサンに関する研究は昨年度の研究期間中にNature Commun.誌に掲載され,Synfacts誌でハイライトされるなど大きなインパクトを与えているといえる.さらにメトキシ修飾シクロパラフェニレンは,環内部にゲスト分子を包接することができ,さらに二電子酸化によって環内部に面内芳香族性という特異な共役状態を形成することができる.これらの特徴は,高密度共役の実現に大きく寄与することができると思われる. シクロファンの研究に関しても目的としていた化合物の合成に成功し,領域内での共同研究も活発に進めており,成果が出つつあることから,当初の計画以上に進展していると判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
ロタキサンの研究に関しては,軸分子の構造を変更することを計画している.特にπ共役構造をもつような軸分子を適用した際に,メトキシCPPの面内芳香族性とどのような相互作用が働くのか解析を行う.さらにメトキシ基をより嵩高い構造に変化することで面内芳香族性の安定化を図ることも計画している. シクロファンの研究に関しては,昨年度の研究で合成に成功したヘテロ原子を含む化合物に関して,光物性などの解析を進める.さらに分子修飾を行うことで集積構造の構築も計画している.
|