2023 Fiscal Year Annual Research Report
Mapping of binding free energies at atomic resolution to explore molecular recognition pathways
Publicly Offered Research
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
23H04059
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 智広 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (30401574)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ナノバイオサイエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)の探針にリガンド分子を固定し、基板表面上に固定したレセプター分子の各点で応力-距離曲線を得る。ここでは以下の2つの測定を行った。 1. 高時間分解能AFMを用いた結合中間状態の解析:申請者が開発した高時間分解能AFMを用いて、完全結合状態と完全解離状態の間に存在する結合中間状態の解析を行った。その結果、従来の単一分子力学測定では観測されなかった、8つの中間状態が観測され、この結果は理論計算の予測と一致することが分かった。 2. 受容体分子表面における結合自由エネルギーの原子分解能マッピング:応力-距離曲線の形状および観測された応力から、リガンド-受容体間に働く相互作用(特異的・非特異的相互作用)、局所的な機械特性を得ることが出来た。これらをマッピングすることにより、結合自由エネルギー地形図が得られた。さらに、このマッピングを非リガンド分子で行うことで、非特異的相互作用のマッピングも可能となり、特異的相互作用を示す分子が感じるポテンシャル地形をより正確に描画することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いる力応力曲線のイメージングの空間分解能は2 nm程度であるが、近年注目を集めている深層学習を利用した高分解能化の技術を応用し、数100枚の画像を解析することで、0.5 nm程度の空間分解能を達成できることを明らかとした。さらに高精細な分子構造データと照合することで、各残基(官能基)の役割を明らかにすることができ、得られるデータと組み合わせ、実験事実に基づく、結合反応経路の提案が可能となった。また、本手法では、1回の応力-距離曲線の測定にかかる時間は50マイクロ秒程度であった。この時間スケールでは分子は様々な構造をとりつつ、平衡状態に近い状態となっていると考えられ、シミュレーションでは得られない、網羅的なサンプリング結果を得ることが出来る。このように、当初の想定以上の精度で測定が可能であることを証明したことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1. 生体内で最も強固な結合であるストレプトアビジン-ビオチン 2. 結合自体は弱いが選択性を持つポリエチレングリコール(PEG)と-抗PEG抗体の結合、の2つの分子認識系を主な研究ターゲットとする。両者は結合解離定数に加えて、分子表面のアミノ酸残基の組成が大きく異なることから、分子認識プロセスにおける分子表面の残基の役割が明らかになる事が期待される。また、測定においては様々な緩衝溶液に加えて、分子夾雑環境における測定も可能である事から、様々な体内環境要因の影響などに関しても解析する。
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