2023 Fiscal Year Annual Research Report
Measurement of cell dynamics dependent on local pH near the cell membrane
Publicly Offered Research
Project Area | Biophysical Chemistry for Material Symbiosis |
Project/Area Number |
23H04082
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
森本 雄祐 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (50631777)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 細胞膜 / 相互作用 / 細胞内pH / シグナル伝達 / 蛍光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内はさまざまなイオンやタンパク質が混在していることから、タンパク質相互作用への各イオンの影響を調べる手段としては、生体外の実験系が有力な手法として主に用いられているのが現状である。一方、膜タンパク質の基質との弱い相互作用機構を正確に知るためには、膜タンパク質が生細胞内の細胞膜近傍においてどのようなイオン環境を感知してダイナミックに機能しているかを知る必要がある。本研究課題では、細胞内pHを1細胞局所レベルでタイムラプス計測可能なナノpHモニター技術を確立させ、1細胞内の局所pH勾配ダイナミクスが膜タンパク質機能に与える影響を明らかにすることを目的としている。 これまでに、細胞膜貫通領域とpHプローブの間に挟まれるドメインまたはリンカーの大きさに依存して細胞質pHの値が変化すること、つまり、細胞膜直下では細胞質全体よりもpHが高くなっており、細胞膜から離れるほど徐々に細胞質全体の値に近づくpH勾配が形成されていることが示されている。一方、細胞の膜近傍局所での蛍光測定は、蛍光シグナルが不十分であるため、データにノイズ成分が多く含まれる。このデータゆらぎの内、生物由来のノイズと計測由来のノイズを切り分けて解析する手法の確立を進めている。本年度の研究において、細胞由来の計測データには非特異的な低周波の周期性が見られることを見出した。シミュレーションを交えた解析から、これが生物由来データに限らない時系列データ特有の特徴であることがわかってきた。これは、データのノイズを特徴抽出することを可能にするとともに、時系列情報の特徴的な周期性を生物が利用している可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜近傍計測のようなSN比が低いデータにおけるノイズゆらぎの特徴付けができており、新規の解析手法が確立できつつあることなどから、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発してきた技術を発展させ、高速度カメラおよび高輝度プローブを導入することで、生細胞の膜近傍においてタンパク質の弱い相互作用を制御する1細胞局所pHと細胞ダイナミクスの同時計測技術を確立させ、1細胞内の局所pH勾配が膜タンパク質の機能に及ぼす影響を明らかにする。 ① 細胞内局所pH勾配と計測ゆらぎの解析手法の確立 細胞膜直下局所での計測は、蛍光シグナルが不十分であるため、データにノイズが多く含まれる。このデータゆらぎの内、生物由来のノイズと計測由来のノイズを切り分けて解析する手法の確立を行う。より高感度化するためにプローブの改良も進めるが、遺伝子操作が容易な大腸菌および細胞性粘菌を用いることで、プローブの性能確認を素早く実施することが可能である。高速度カメラを利用した計測によって、100 nm以下の局所pH勾配の定量と膜タンパク質ダイナミクスの同時計測を可能にする。 ② 光操作による細胞内pHの制御 細胞機能と細胞内pHの関係を明確にすることを目的とし、バクテリオロドプシン型タンパク質を利用した細胞質pHの光操作を行う。細胞内pHの低下および上昇の制御を行ったとき、①の計測・解析系を利用し、細胞内局所pH変化と細胞ダイナミクスの相関を計測する。
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Research Products
(18 results)