2023 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding and control of hyper-ordered structures governing dielectric responses of Bi-based relaxor ferroelectrics
Publicly Offered Research
Project Area | Progressive condensed matter physics inspired by hyper-ordered structures |
Project/Area Number |
23H04119
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
萩原 学 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (30706750)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 誘電体 / リラクサー / エネルギー貯蔵 / 超秩序構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ペロブスカイトABO3型酸化物のAサイトをBiとその他のイオン・空孔がランダムに占めたBi系リラクサーについて、Biの局所的な変位やナノスケールの分極構造といった「超秩序構造」とエネルギー貯蔵特性との関係を明らかにし、10 J/cm3超のエネルギー貯蔵密度を有する大容量キャパシタ用の誘電体セラミックスを開発することである。研究計画の初年度である2023年度は、Aサイトの2割をBi3+が占め、さらにNa+、K+、または空孔で電荷補償をとった3種類のモデル組成(1)Sr0.6(Bi1/2Na1/2)0.4TiO3(SBNT)、(2)Sr0.6(Bi1/2K1/2)0.4TiO3(SBKT)、(3)Sr0.7Bi0.2TiO3(SBT)を有する緻密な多結晶セラミックスを作製し、Aサイト組成と電気的特性の関係を調べた。その結果、Aサイト組成によって低電界下での誘電率、絶縁破壊強度、ならびに分極曲線の形状が大きく変化し、結果として上記のSBNT、SBKT、SBTの中ではAサイトにKを有するSBKTにおいて最大のエネルギー貯蔵密度(2.6 J/cm3)が得られることがわかった。また、これらの試料についてX線原子対相関関数による局所構造の解析および複素インピーダンス法による酸化物イオン伝導性の解析を実施したところ、Aサイト周りの局所的な歪が組成によって変化し、それが酸化物イオン伝導性に影響することで絶縁破壊強度の変化をもたらしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに3種類のモデル組成を有するBi系リラクサー強誘電体セラミックスの作製に成功し、Aサイトの組成によってエネルギー貯蔵特性と局所構造が大きく変化することが確かめられたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の結果よりAサイトにK+を用いたSBKTが最も高いエネルギー貯蔵密度を示すことがわかった。今後は、蛍光X線ホログラフィ法による超秩序構造の解析に向けてSBKTの単結晶試料を作製し、エネルギー貯蔵特性と超秩序構造との関係性の解明を目指す。また、水熱合成法によりSBKTのナノ粒子を合成し、これを用いてナノサイズのグレインからなるセラミックスを作製し、さらなるエネルギー密度の向上につなげる。さらに、SBKTと白金電極とを積層・共焼結させた積層セラミックコンデンサの試作と性能評価にも取り組む。
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