2023 Fiscal Year Annual Research Report
複雑化した脳におけるアストロサイトのデコーディング
Publicly Offered Research
Project Area | Glia decoding: deciphering information critical for brain-body interactions |
Project/Area Number |
23H04156
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
新明 洋平 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00418831)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アストロサイト / フェレット |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳動物の進化の過程で大脳は肥大化し、その表面には明瞭なシワ(脳回)を獲得するなどその構造は複雑化してきた。この進化の過程で、神経細胞に加えてグリア細胞の数は著しく増加するとともに、その形態と機能も発達してきた。例えば、ヒトのアストロサイトを移植したマウスでは記憶・学習能力が向上する。さらに、マウスに比べてヒトでは白質アストロサイトのサイズが大きくなっているとともに、その形態が多様化している。このように、進化における白質アストロサイトの数の増加と形態の多様化が高次脳機能の発達に重要であったと考えられる。従って、皺脳動物(脳回など発達した脳構造を持つ動物)でのアストロサイト研究は重要であるが、解析技術が確立されていなかったこともありその研究は遅れている。本研究では、私たちが独自に開発した技術、皺脳動物であるフェレットの大脳皮質におけるアストロサイト選択的な遺伝子発現システムを利用して、フェレットのアストロサイトの解析を行なった。その結果、マウスに比べてフェレットの白質アストロサイトのサイズが大きいこと、ヒト白質に見られるアストロサイトの形態的多様性がフェレットにも存在することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していたアストロサイトの形態的解析を終了することができた。実際、マウスに比べてフェレットの白質アストロサイトのサイズが大きいこと、ヒト白質に見られるアストロサイトの形態的多様性がフェレットにも存在することを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
①白質アストロサイトにおける網羅的な遺伝子発現解析 フェレットアストロサイトの肥大化と形態の多様化に関わる候補遺伝子を絞り込む。フェレットに比べてマウスの白質アストロサイトは小さく単純な形態をしていることから、両者の遺伝子発現を比較することにより形態制御に関わる候補分子を探索する。申請者らは既に、フェレットとマウスの大脳由来のアストロサイトを用いて、RNA-Seq解析による網羅的な遺伝子発現の比較解析を行い、マウスに比べてフェレットで発現が高い遺伝子を複数見いだしている。今後、定量的発現解析が可能であるRNAscope in situ hybridization法を用いてフェレットとマウスの白質アストロサイト(蛍光標識)における候補遺伝子の発現を調べることにより、フェレットの白質アストロサイトに共通して高く発現する分子と各サブタイプに特徴的な発現を持つ分子を絞り込む。
②白質アストロサイトの肥大化と形態の多様化の分子機構の解析 上記で絞り込んだ候補遺伝子が、白質アストロサイトの形態制御に重要であるかを検証する。マウスとフェレットアストロサイトの初代培養系を用いて、候補遺伝子の過剰発現およびCRISPR/Cas9によるノックアウトを行い、アストロサイトの肥大化に関与する分子を同定する。また、申請者らが独自に開発したフェレット大脳のアストロサイトでの遺伝子操作技術を用いて、白質アストロサイトの形態の多様化に関わる分子を同定する。具体的には、フェレット大脳のアストロサイトにおいて候補遺伝子の過剰発現もしくは遺伝子ノックアウトを行い、アストロサイトの形態への影響を調べる。このように、in vitroの実験系とin vivoの実験系を有効的に組みわせることにより、白質アストロサイトの肥大化と形態の多様化の分子機構を明らかにする。
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