2023 Fiscal Year Annual Research Report
脳障害後の皮質脊髄路可塑性を誘導する分子群の同定
Publicly Offered Research
Project Area | Inducing lifelong plasticity (iPlasticity) by brain rejuvenation: elucidation and manipulation of critical period mechanisms |
Project/Area Number |
23H04222
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上野 将紀 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40435631)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 皮質脊髄路 / 可塑性 / 再編 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳障害では、神経回路網が破綻し、運動をはじめとする神経機能の低下をもたらす。私たちはこれまで、障害後、大脳皮質-脊髄をつなぎ随意運動をになう皮質脊髄路が、脊髄内で新たな回路網を形成して再編し、機能回復に寄与することを見出してきた。しかしこの再編を引き起こす分子メカニズムは不明のままである。本研究では、再編する回路内で発現変動する因子群を探索し、障害後に皮質脊髄路の再編を誘導する分子群を明らかにすることを目的とする。本年度はまず、脳梗塞モデルマウスで、残存した皮質脊髄路が再編する脊髄内の接続様式を明らかにし、同定した回路内の細胞で発現が変動する因子群を網羅的に解析した。まず脳梗塞後、細胞種ごとに多くの因子群の発現が変動することがわかった。発現変動する因子の中から、再編を誘導しうる候補因子を、各種のバイオインフォマティクス解析で抽出した。これらの因子について、realtime PCRや免疫染色を行い、脳梗塞後、経時的に発現量が増加し、脊髄に発現分布することを確かめた。次に、候補因子の軸索伸長に対する作用を培養神経細胞を用いて検証したところ、各種の軸索伸長阻害因子の存在下で、軸索長を増加させることを見出した。さらにこれらの因子は、軸索伸長に関わる細胞内シグナルを動かすことをWestern blotで確認した。以上の結果から、これらの因子は、障害後の軸索の再編に関わる可能性が示唆された。これら因子の機能をさらに探索することで、機能回復の鍵となる回路再編の分子基盤の理解へ貢献すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、脳障害後に皮質脊髄路の再編を誘導する分子群を明らかにすることを目的とする。本年度は、再編する回路内で発現変動する因子群を見出し、さらにその中から、軸索を伸長させる作用をもつ因子を見出すことができた。以上から、再編を引き起こす分子群の解明へ向け、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に見出した軸索を伸長させる候補因子について、発現量が変動する分子機序を探索する。さらにこの候補因子が、脳梗塞後に残存した皮質脊髄路に対し、軸索伸長作用を有するかを検証する。以上の研究から、皮質脊髄路の再編を誘導する分子群の解明を目指す。
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