2023 Fiscal Year Annual Research Report
損傷ニューロンのキューを感知した履歴を持つミクログリアによる神経再生能力の賦活化
Publicly Offered Research
Project Area | Inducing lifelong plasticity (iPlasticity) by brain rejuvenation: elucidation and manipulation of critical period mechanisms |
Project/Area Number |
23H04229
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
桐生 寿美子 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (70311529)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 神経再生 / 神経変性 / ダメージ応答 / ATF3 / AIS / 運動ニューロン / 神経損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
成熟運動ニューロンは神経系の中では例外的に神経損傷を受けても再生・修復可能である。神経再生プログラムのスイッチをONにした損傷運動ニューロンは、敢えて極性を放棄し一旦未熟な状態に若返ることで潜在的な再生能力を賦活化させると考えられる。損傷を受けた運動ニューロンは成熟ニューロン特有の構造である軸索初節(AIS)を分解することを最近私たちは見出した。AISを分解することにより、損傷運動ニューロンは一時的に未熟な状態に移行し軸索変性を防ぎ再生能力を賦活化できることが明らかになった。ところがAIS同様の構成蛋白質からなるランビエ絞輪は神経損傷後も分解されなかった。AIS特異的に蛋白質分解が起こる理由として、損傷運動ニューロンからのキューに応答したミクログリアとの相互作用が関与するのではないかと考えられた。そこでまず本年度は運動ニューロンのAISとミクログリアの関係を組織学的に明らかにすることにした。そのためAIS全体像を組織学的に効率よく検出できるプロトコールを確立した。というのも運動ニューロンのAISは一定の方向性を持たずバラバラに局在するため、通常の組織切片でAIS全体像を検出できる頻度があまり高くなかったからである。これを改善したことにより、損傷早期に分解前のAISとミクログリアが相互作用することが明らかになった。次にこの時期のミクログリアを回収しトランスクリプトーム解析を進めるための条件検討を進めた。本年度は予想以上にここで時間を費やした。一方で、AIS構造が存在しないニューロンはタンパク質恒常性が破綻した神経変性疾患に対して高い耐性を持つことが明らかになってきた。これについては現在論文を投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成熟運動ニューロンの神経再生能力を賦活化する仕組みとして疾患という側面からも新しい研究成果を得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の論文投稿を行う。またAIS分解に関与すると考えられるミクログリアとの相互作用についてはさらにそのメカニズム解明を進める。
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