2023 Fiscal Year Annual Research Report
核質の分子動態がクロマチン機能に与える影響の検証
Publicly Offered Research
Project Area | Genome modality: understanding physical properties of the genome |
Project/Area Number |
23H04287
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
原 裕貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 講師 (80767913)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 核 / クロマチン / 核内分子 / 核内環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、核内DNA濃度変化を誘導する方法の条件検討と核内分子の動態の理解、さらに分子動態の操作による核への影響の検証の3項目を中心に研究を進めた。 核内DNA濃度変化法に関して、DNA量の実験的操作や核内でクロマチン凝縮度を操作する実験条件を探索した。これにより、アフリカツメガエル卵細胞質抽出液を用いた核の無細胞再構成系において、核全体、もしくは核内部の局所的なDNA濃度を操作可能な実験条件を複数設定することが出来た。 核内分子の動態の理解に関しては、複数の核内分子の可視化を試みた。特定細胞条件では核内に局在しない分子も存在し、目的の分子動態の理解には至っていない。 核内分子の動態操作に関しては、特定の核内分子の動態や量を操作する実験手法の整備を試みた。その結果、核質分子として機能することが推定された分子の動態制御を試みたが、それら分子は核内に局在せず、動態や量の操作は実現しなかった。その一方で、この操作に付随してクロマチン構造変化の誘導を行うことが出来た。生じたクロマチン構造の変化が、核サイズや核機能に与える影響を解析中である。また、この操作により生じた現象をまとめた論文を現在作成中である。 また、上記の実験で得られた知見と先行研究の成果を統合し、細胞内での核に対する「力」が核サイズ制御に与える影響とその制御機構をまとめた総説を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.(当初計画)核内DNA濃度操作法の確立:アフリカツメガエルの細胞質抽出液を用いた核の再構成系において、既知の手法に加え、核内でのDNA濃度を操作する新規手法を確立できた。このように、核全体ならびに核内部の局所的なDNA濃度を操作可能な実験条件の探索は順調に進行した。 2.(当初計画)核質の分子動態の理解:現段階では、目的の核質分子の動態の理解には至っていない。 3.(当初計画)核質の分子動態の核への影響の理解:現段階では、目的の核質分子の操作を行うことは出来ていない。その一方で、核外部の分子動態の制御と、それに付随して核内のクロマチン構造が変化することを見出された。この結果は、新たな核内のクロマチン構造制御機能を示唆しており、現在結果をまとめ、論文を作成中である。 以上のことから、目的の核質の分子動態制御の解析を大きく進展出来てはいないが、新規核内クロマチン構造の操作手法の確立や、新規性のある制御機構の示唆に成功しており、研究プロジェクトととしての成果が出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.(当初計画)核質の分子動態の理解: 解析可能な他分子の動態理解を試みる。 2.(当初計画)核質の分子動態の核への影響の理解: これまでとは異なる手法を試行し、核質分子の動態操作手法の確立を試みる。 3.(新規方向性)クロマチン構造変化による核の構造や機能制御への影響の検証: 本年度得られた新規のクロマチン構造操作に関する成果発表を進める。それとともに、このクロマチン構造変換が核のサイズ制御、染色体構造制御や核機能制御に与える影響についても解析を進める。
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