2023 Fiscal Year Annual Research Report
Build a house in a storm: Exploring the secret of how diatoms form stable morphology against external force changes
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
23H04307
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松本 健郎 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (30209639)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 形態形成 / 珪藻 / 力学的適応 / ものづくり / バイオメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Aulacoseiraの伸展過程の直径と長さ変化の詳細観察:Aulacoseiraが進展して分裂しても直径が殆ど変わらない謎を解き明かすため,伸張・分裂に伴うAulacoseiraの直径と長さの時間変化を調べた.その結果,個体によりバラツキが大きいものの,概ね,珪藻は伸張する際に一旦,直径が減少し,伸張が終了した後で直径が元に戻るらしいことが判ってきた.これは伸張する際に細胞内圧が低下するために直径が減少し,伸張終了後,内圧が回復することで直径が元に戻ると考えると納得いく結果であるが,伸展しても直径が殆ど変わらない理由の解明には至っていない. 2.3点曲げによる被殻の力学特性の計測と有限要素モデル構築:前回の学術変革領域研究の補助の下で試作した3点曲げ装置でAulacoseiraの3点曲げ試験を継続し,成長に伴う被殻のヤング率Eの変化,破断部位と破断曲げモーメントの大きさの変化を調べた.また,得られたデータを元にAulacoseiraの有限要素モデルを作成した. 3.AFMによるAulacoseira被殻の力学特性計測:現有するAFMで被殻のヤング率を計測する予定であったが,AFMの故障により,実施できなかった.現在,修理中であり,来年度実施する予定である. 4.殻の成分計測:SEMによる観察結果から,珪藻の被殻は薄い柔らかそうな殻帯と,厚く硬そうな蓋殻の2種類からなることが判っている.両者はの被殻は違う素材から形成されている可能性が高い. そこで,学内にある顕微フーリエ変換赤外分光光度計などを用いて被殻の成分を調べるため,本年度は装置の使用法の習得,実際の珪藻被殻の観察条件の検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究計画のうち,「1.Aulacoseiraの伸展過程の直径と長さ変化の詳細観察」と「2.3点曲げによる被殻の力学特性の計測と有限要素モデル構築」は進めることができたが,「3.AFMによるAulacoseira被殻の力学特性計測」についてはAFMの故障もあり,まだ着手できておらず,「4.殻の成分計測」については計測の基礎検討を進めた段階に留まっているから.
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Strategy for Future Research Activity |
研究後半の今年度は,特にAulacoseiraが曲げ負荷下でも折れることなく伸展するメカニズムを明らかにすることを中心に据え,昨年の研究(1.Aulacoseiraの伸展過程の直径と長さ変化の詳細観察,2.3点曲げによる被殻の力学特性の計測と有限要素モデル構築,3.AFMによるAulacoseira被殻の力学特性計測,4.顕微フーリエ変換赤外分光光度計などを用いた殻の成分計測)を継続するとともに,以下の5,6について研究を進める: 5.エネルギ原理を用いたAulacoseira内部の圧力の推定:Aulacoseiraが曲げ下でも折れずに伸張できるのは内圧が高いためである可能性がある.従来,細胞内圧は培養液の浸透圧を様々に変えて培養し,Aulacoseiraの伸長が停止する浸透圧や, 伸張時に発生する力から数100 kPa以上と推定していたが,誤差要因が大きかった.ところで Aulacoseiraをアルカリ溶液に浸すと結合が緩み,細胞が勢いよくバラバラになることが知られている.この時に細胞が分裂する瞬間に獲得する運動エネルギは細胞内圧によるひずみエネルギと等しいかそれ以下と予想される.こうすると少なくとも内圧の最低値は精度よく求めることができる筈である.この原理を利用してAulacoseira内部の圧力を推定する. 6.力学解析と新たな伸展メカニズムの提案:以上得られた結果から伸長時のAulacoseira被殻の力学モデルを作成,どのくらいの曲げモーメントに耐えられるのか推定し,2.の結果と比較する.これらの経過を通じ,Aulacoseiraが曲げ モーメントの変動下でも伸展できるメカニズムを明らかにするとともに,曲げモーメントと剪断力に対し,殻形態が異なる応答を示す理由の手がかりを探る.
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Research Products
(11 results)