2023 Fiscal Year Annual Research Report
非細胞素材の局在制御による消化管の形態形成機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
23H04312
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲木 美紀子 大阪大学, 大学院理学研究科, 講師 (10747679)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 器官形成 / 細胞外基質 / コラーゲン / ラミニン / 左右非対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の形態は、その機能発現に必須であり、遺伝的に厳密に決められている。例えば、消化管は、他の臓器と結合できる向きや大きさでなければならない。器官の形態は、それを構成する細胞の移動や変形によって形作られると考えられているが、非細胞素材の寄与については、あまり明らかにされていない。申請者は、ショウジョウバエの消化器官の左右非対称な形態形成時に、細胞外基質が時空間的に特異的に局在制御されることを見出した。本研究課題では、この細胞外基質の局在制御にかかわる因子を同定し、非細胞素材が消化器官の形態形成を制御する機構を明らかにすることを目的とした。 細胞外基質の制御にかかわると想定される、膜貫通あるいは分泌型たんぱく質に絞り、異所的に後腸に強制発現させることにより、後腸の捻転を阻害する細胞外基質の制御因子の探索を行った。その結果、ラミニンを過剰発現させると捻転異常がみられることがわかった。特にラミニンAとB1の同時過剰発現では捻転が遅れるまたは止まる様子が観察され、ライブイメージングでも確かめられた。この条件で捻転前の後腸のコラーゲンIVの局在を調べたところ、異所的な後腸への局在がみられた。これらの結果は、コラーゲンの蓄積が抑えられていることが正常な捻転に必要であるという仮説を指示した。In-cell AFM法に関しては測定を試みたが、ショウジョウバエ胚の膜を貫通できず、捻転前後の後腸の硬さを計測することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
In-cell AFMでの後腸の硬さの計測が難しいことがわかったが、細胞外基質の局在と後腸の捻転を制御するものとしてラミニンを同定することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
(i)非細胞素材の時空間的制御因子の探索 引き続き膜貫通あるいは分泌型たんぱく質に絞り、異所的に後腸に強制発現させることにより、後腸の捻転を阻害する細胞外基質の制御因子の探索を行う。それらと血球細胞における2つのコラーゲン分子を組み合わせた発現誘導、または、コラーゲン断片の発現誘導を同時に行い、後腸の捻転を止めることができる条件を探索する。ショウジョウバエでは、たんぱく質の局在が観察可能なたんぱく質トラップ系統が入手可能であるため、後腸の外側部近傍に局在するたんぱく質のスクリーニングも継続して行う。 (iii)非細胞素材による組織捻転および伸長制御のシミュレーション 上述の実験結果をシミュレーションにより検証する。後腸捻転に関しては、これまでの上皮細胞のねじれの研究で、3次元のバーテックスダイナミクスモデルを作製している後腸外側の細胞外基質の硬さとして、消化管モデルの外側円周の拘束条件を付加する。拘束条件を改変した状態で、消化管モデルのねじれの度合いを調べる。マルピギー管の形態形成に関してのシミュレーションでは、マルピギー管を構成する上皮細胞の3次元形状をin vivoで詳細に解析して消化管モデルの初期状態を新たに作製し、マルピギー管のモデルをつくる。そこへ、細胞外基質による拘束および細胞の自発的なゆらぎ運動であるオシレーション(後腸でもマルピギー管でもみられる)を導入し、組織の伸長が見られるかを検証する。
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