2023 Fiscal Year Annual Research Report
Mathematical study to elucidate 3D morphogenesis driven by topological defects
Publicly Offered Research
Project Area | Material properties determine body shapes and their constructions |
Project/Area Number |
23H04316
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
斉藤 稔 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (20726236)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 形態形成 / 自己組織化 / トポロジカル欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体組織の構築方法を数理的に理解するために、「トポロジカル欠陥」に注目した研究である。皺や繊維が組織表面に存在する場合、組織には何らかの意味で「向き」を規定しうるが、局所的に「向き」を定義できないような空間上の特異点も出てきてしまう。トポロジカル欠陥とはこのような特異点を指す。皺や繊維に限らず、細胞が六角格子的に密にパッキングしている状況などでも、「格子の向き」が定義できないようなトポロジカル欠陥も現れうる。
2023年度は細胞の離散モデル(agent-based model)を用いて、いくつかの解析を行なった。曲面上の細胞集団の運動を捉えるために、Monge表記された曲面の上の細胞運動のモデルを解析した。このモデルでは細胞は球状粒子として表現され、細胞の直線的な運動は測地線方程式として記述される。細胞が密な状況になると排除体積効果により細胞が六角格子的に整列するが、曲面の効果により格子の向きが崩れ、トポロジカル欠陥が出現する。また、曲率が高い曲面上の点で細胞の集団回転運動が誘起されうることも発見している。現在はこの現象を解析中である。また平面における変形可能細胞集団におけるトポロジカル欠陥ダイナミクスの研究も行なった。変形可能な細胞モデルを用いて高密度の細胞集団の挙動を調べたところ、細胞の変形しやすさに依存して細胞集団に流体-流体転移が生じる。その転移がトポロジカル欠陥のパーコレーションで説明可能であることも解明している。現在はさらに詳しくこの現象を解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
曲面上のトポロジカル欠陥ダイナミクスに関しての理解は一定の進展が見られたが、欠陥が引き起こす曲面の座屈・変形への理論的展開、解析が予定よりも遅れている。これは座屈や変形の挙動を記述する連続体モデルの解析に関して技術的な困難に直面しており、これが全体的な進捗の遅れに影響を与えている。
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Strategy for Future Research Activity |
離散モデル(agent-based model)の解析を進め、トポロジカル欠陥のダイナミクスとその曲面変形への効果の理解を深める。具体的には曲面上の細胞運動モデルの解析をすすめ、曲面効果による集団的回転運動が引き起こされる条件を精査し、生体組織内で発生しうるかなどを明らかにする。またこのモデルにおいて、座屈などによる曲面の変形も考慮した発展モデルを検討する。並行して、開発してきたいくつかの数理モデルを用いた実験研究者との共同研究を模索する。同時に連続体モデル解析に関して専門的知識を持つ研究者との協力を模索し、連続体モデルによるアプローチを再検討する。
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