2023 Fiscal Year Annual Research Report
New hypothesis on softness perception: Low-frequency frictional vibration to evoke softness
Publicly Offered Research
Project Area | Analysis and synthesis of deep SHITSUKAN information in the real world |
Project/Area Number |
23H04360
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡本 正吾 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (10579064)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 触感 / やわらかさ / 摩擦 / 粗さ / 錯覚 / 肌 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らのこれまでの研究から,ヒトが指で物体に触れて,そのやわらかさを判断する基準は,押し込み動作と擦り動作で異なる.押し込み動作では,指で物体を押す荷重と,接触面での指と物体の変形をもとにして,やわらかさが判断される.本研究は,擦り動作においては,押し込み動作におけるやわらかさ判断基準に加えて,摩擦がやわらかさ判断に作用しているという仮説をこれまでの証拠を補完しながら実証し,その作用と原因を追究する. 擦り動作時の摩擦変動がやわらかさ判断に影響する事実を実験的に追究している.具体的には,摩擦係数と摩擦変動パターンが異なる資料を3Dプリンタで作成し,それらを指で擦って,やわらかさを判断する心理物理実験を実施した.摩擦を統制するために,資料の表面粗さと勾配パターンを操作した.この中には,樹脂面もしくは樹脂材料がより硬く感じられるための加工・表面統制と,よりやわらかく感じられるための加工・表面統制を含んだ.結果から,波長が大きく(50 mm程度)で振幅が0.5 mm程度のマクロな正弦波凹凸形状を有した表面を擦ると,平らで表面粗さが小さい(念入りに研磨された)資料よりもやわらかいと判断された.また,波長が10 mm程度の凹凸面を擦ると,硬いと判断された. さらに,摩擦と硬さの統制がより容易な仮想平面をハプティック・インタフェースで擦る実験を実施した.平面の硬さは,250 N/m から 500 N/m の範囲で,摩擦係数は 0から0.5の範囲で変化させた.摩擦係数が変化することで,平面の硬さが変化したように感じられたが,指で資料を擦る場合とは傾向が異なった.すなわち,摩擦が高い平面ほど,やわらかく感じられた. 以上のことから,表面の摩擦もしくは摩擦の変化につながる形状が,表面を擦った際のやわらかさの判断に影響することは確実であると判断した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた実験の進捗が順調であり,また,研究成果をまとめた論文の査読・受理状況も好調である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度のもっとも重要な課題は,表面の摩擦が,擦り時のやわらかさ判断にどうして影響するかを追究することである.これまでの実験結果から,摩擦がやわらかさ判断に影響する現象は,(指の)皮膚で擦ることに特化して表出する可能性が高い.この仮説を実証し,原理に迫る. 具体的な実験方法としては,スタイラス(先端の丸い棒)で,摩擦が異なるように潤滑剤を施した複数のゴム平面を擦り,指で擦る場合とやわらかさ判断に違いがあるかどうかを検証する.ここでは,摩擦が低下する粉体潤滑と,増加する粉体潤滑を用いる.ゴム平面自体の硬さも3水準程度で異なる.これらを擦ったときのやわらかさ判断を心理物理実験によって調査する. さらに,ハプティック・インタフェースを用いて,指腹に摩擦力と法線力を提示する実験によって,指腹に同時に2方向(法線方向と接線方向)から力が加わるときの,力知覚現象を調査する.2方向から力が同時に加わるとき,法線方向の力が過剰に感じられると仮説を立てている.この仮説が正しければ,摩擦がやわらかさ判断に影響する現象の大部分が説明できる.
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