2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research on applications of combinatorial reconfiguration solvers
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Organization of Innovative Algorithmic Foundations for Leading Social Innovations |
Project/Area Number |
23H04383
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川原 純 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (20572473)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 組合せ遷移 / 二分決定グラフ / グラフアルゴリズム / 組合せ最適化 / マッチング |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は大きく分けて以下の2つの問題に取り組んだ。1つ目は、研修医の病院配属や、ルームメイトの部屋割当、パートナー探しなど、一般にマッチングと呼ばれる対象の遷移問題である。世の中には対象を別の対象に割当てる問題は多く存在し、割当を稼働させたまま徐々に変化させることが必要になる状況も多い。本研究では特に、種類の異なるアイテムをエージェントに割当てる際に、エージェントが各アイテムの好みを持つ場合に、エージェントに羨望が生じないようにアイテムの割当を徐々に変更する(無羨望マッチング)問題設定を考えた。特に、複数のアイテムに対する好みが同一であることを認める設定を考慮した。無羨望マッチングのある種の同値関係を定義し、その下でマッチングの改善を行う際の得られるマッチングの一意性を示す等、改善遷移の数学的性質を明らかにした。また、マッチング遷移問題に対して、ZDDと呼ばれるデータ構造を用いたソルバーが存在するが、従来のZDDソルバーはマッチング辺の1本追加と1本削除の遷移ルールのみ対応していたが、交互サイクルに沿って一斉にマッチング辺を切り替える遷移ルールに対するアルゴリズムの開発を行った。 2つ目の問題はグラフ分割問題である。特に、都道府県の選挙区を、1票の格差をなるべく小さくするように均等に構成する問題を考えた。将来の人口予測データを用いて、現行の選挙区割を1票の格差が小さい選挙区割に徐々に切り替えていく手順を求める手法を設計した。選挙区割は細長くならないようにする必要があり、また、交流が深い地域はなるべく同じ選挙区に入るように選挙区を策定するなど、複数の必要な条件を考慮し、ZDDの集合演算で計算を行う手法を提案した。 組合せ遷移ソルバーをアルゴリズムの非専門家が利用可能にするためのソフトウェアの整備も行った。本年度は、扱うことができる組合せ遷移問題の種類を強化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2つの組合せ遷移問題に取り組み、それぞれ結果を得ている。おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は大きく分けて以下の2つの問題に取り組む。1つ目は、交通やネットワークなどの経路(パス)を徐々に切り替えていく遷移問題を扱う。指定した性質を満たしながら、パスを切替える(組合せ遷移)手順について、ZDDソルバーによる解決手法を提案する。パスは対象となるグラフの辺の集合で表されるが、パスの切替は従来のルール、すなわち1つの辺の追加と削除によって表現することはできず、これまで扱ってきた遷移問題とは異なり、遷移ルールが複雑になる。本研究では、実問題で現れる複雑なパスの切替をZDDで表現する方法を考案し、手法の実装を行い、計算機実験によって評価する。 2つ目は、厳密被覆問題(集合被覆問題)における集合の遷移問題を扱う。厳密被覆問題は部品を箱に敷き詰める問題や仕事のスケジューリング等、様々な実問題をモデル化した問題となっている。厳密被覆問題では集合の遷移のさせ方が自明ではなく、いくつかの方法が考えられる。本研究では、いくつかの実問題例に対し、厳密被覆問題の遷移の妥当なルールを考え、そのルールの下で遷移のアルゴリズムを考案し、実装を行い、計算機実験で評価する。特に、木材建築における材木の配置を切替える問題に取り組む。 これまでの研究で実装したアルゴリズムをライブラリとして整備する。アルゴリズムの専門家ではないユーザ向けに利用しやすいインターフェイスとドキュメントを整え、一般公開を行う。特に、プログラミング言語 Python から様々な種類の組合せ遷移問題を簡単に解くことのできるライブラリの開発を行う。また、本研究課題以前から開発を続けている、組合せ遷移の求解結果を視覚的に表示するGUIソフトウェアのアップデートを行い、ユーザがより組合せ遷移問題に親しみやすく、利用しやすいよう改善を行う。
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