2023 Fiscal Year Annual Research Report
決定グラフで扱える世界の拡張
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and Organization of Innovative Algorithmic Foundations for Leading Social Innovations |
Project/Area Number |
23H04391
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Research Institution | NTT Communication Science Laboratories |
Principal Investigator |
伝住 周平 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, リサーチアソシエイト (90755729)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | データ構造 / 圧縮索引 / 離散構造 / 二分決定グラフ / 組合せ集合族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,集合の集合の集合である組合せ集合族を効率的に扱うための効率良いデータ構造の開発を目指している.組合せ集合として表現されるデータは学術分野でも産業分野でも数多くの状況で出現する離散構造であり,それらを集めたものである組合せ集合族も重要な概念である.また,機械学習や論理回路など多くの分野で用いられる論理関数は組合せ集合と一対一対応させられる離散構造であり,組合せ集合族をうまく表すことができるなら論理関数の集合もまたコンパクトに格納できる.そのため組合せ集合族用のデータ構造を実現できれば多くの実問題に対し有用性が期待できる.しかしながら,組合せ集合族に特化したデータ構造はこれまでに存在せず,省領域かつ高速に組合せ集合族を扱うことは困難であった.そこで本研究ではいままでうまく扱えなかった組合せ集合族に関する問題や組合せ集合族の表現に取り組み,以下の成果を得た: 1) k-集合選択問題を高速に解くアルゴリズム 与えられた組合せ集合の中から目的関数を最大化するようにk個の集合を選択する方法を全て求める問題であり,これを入力を圧縮表現した決定グラフ上で解くことにより既存手法よりも遥かに高速に解を全列挙することができる.さらに,決定グラフならではの構造を活かした工夫によりさらに計算速度を向上させた. 2) 組合せ集合族を表現するデータ構造 通常の組合せ集合を表すデータ構造であるゼロサプレス型二分決定グラフを部分構造として用いる新たなデータ構造を提案した.これにより複数の決定グラフを並べて表す従来の手法より大幅にコンパクトに組合せ集合族を表現することが可能となった.また,このデータ構造内の組合せ集合を検索するアルゴリズムも提案することで組合せ集合族用のデータベースとして使用できるようになった.さらに,完全一致検索だけでなく部分一致など組合せ集合ならではの検索を行うアルゴリズムも開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の根幹となる組合せ集合族を表すためのデータ構造として通常の二分決定グラフを部分構造に活用した新たなデータ構造を提案することができた.これを基盤として用いることで今後の研究を確実に進めていくことが可能となる.データ構造の形状がはっきりしたことによりその上で動作するアルゴリズムを開発することができる.また,現在は通常の決定グラフの列から組合せ集合族を表す決定グラフへと変換することでしかこのデータ構造を構築することができないが,より巨大な組合せ集合族を扱うためにも通常の決定グラフを介さずに直接求めるデータ構造を構築するアルゴリズムを開発できる見通しがついた.これにより通常の決定グラフの列で表そうとすると指数的な長さが必要になってしまうような組合せ集合族でも処理できるような方法を考えられる.また,本データ構造の特性を精査することで直接構築アルゴリズムと親和性の高い問題を検討することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
圧縮された組合せ集合や組合せ集合族を与えられたときにそれを展開することなく異なる階層の離散構造を出力するような演算としてどのようなものが可能でどのようなものが困難なのか明らかにすることを目指す.以下の方針に基づいて組合せ集合族を表す決定グラフと通常の決定グラフの間の演算に関してどこまで複雑な制約を扱えるかの限界を探求する. ①組合せ集合族を表す決定グラフを直接生成するような組合せ集合の列挙や最適化アルゴリズムを開発する.圧縮された表現である決定グラフを展開することなく計算するために演算が満たすべき条件とは何かを調査する.組合せ集合が入力であり一つの解もまた組合せ集合である問題を数多く調査することで可能な演算と困難な演算の間の境界を発見する. ②組合せ集合族を表す決定グラフが与えられたときに,そこに含まれる複数の組合せ集合から何らかの制約に基づいて定まる組合せ集合を決定グラフとして返す演算を定義し,それを実行するアルゴリズムを作成する.つまり組合せ集合族が入力であり,一つの解が単一の組合せであるような問題を吟味する.そのような問題において全ての解を求める場合に入力を展開することなく計算を進め通常の決定グラフを効率良く直接構築する技術を開発する. まず①として,決定グラフから高階決定グラフを構築する演算として集合の被覆問題を扱う.その派生として各要素の出現回数を指定する厳密被覆問題や有限体上の被覆問題も考える.このような問題においてどのような性質が満たされれば決定グラフ上で効率良く計算できるかについても検討する.次に②に関して,組合せ集合族に含まれる組合せ集合に共通して出現する部分集合や頻出する部分集合を取り出す演算,あるいは極大極小な組合せを全て抽出する演算などが考えられる.これらは通常の決定グラフにおける同種の演算を組合せ集合族を表す決定グラフ上で模倣することにより達成を目指す.
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