2023 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの食料不安に関する対策樹立のためのメカニズム解明と栄養摂取量等の疫学研究
Publicly Offered Research
Project Area | Establishment of Child Poverty Research |
Project/Area Number |
23H04457
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
片桐 諒子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 栄養疫学・食育研究部, 室長 (60813508)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 食料不安 / 貧困 / 産後 |
Outline of Annual Research Achievements |
格差の拡大により脆弱な層がよりその負の影響を受けやすい。食料不安は「食費や他の資源の不足で、個人や世帯が適切な食料を手に入れることができない」状況のことであり、食料の不足に対する経済状況、不安や空腹も含んだ多面的な概念である。国際的には注目され、アメリカでは農務省により継続調査が行われている項目であり、食料不安には食へのアクセスのみならず心理、社会的要因を含み、その程度(深刻度)を把握する手法が海外では開発され、国単位でのアセスメントに生かし、対策に結び付けられている。しかし、日本ではこうした調査が少なく、実態の把握や要因の解明が進んでいない。このため、こどもを含んだ調査により食料不安の要因の理解を目的として本研究を実施する。 学術変革領域に参画し、領域代表者や領域内の研究者の研究実施状況等の報告、交流、意見交換を通じて貧困全体を取り巻く状況への理解が深まり、貧困全体における食料不安という一面の理解度が高まった。このことは今後の解析にも生かしうる。今年度はこどものいる、もしくは生まれた妊産婦を対象とした家庭における食料不安の要因に関する解析にとりかかった。食料不安について国際的に使用される質問票で調査したデータセットにおいて、妊産婦等1万人のうち子供をもつ方を対象として、USDAの世帯における食料不安に関する質問票を用いて、社会的、経済的、心理的側面を明らかにし、どのような層が食料不安に脆弱であるか検討した。今年度の結果から、食料不安に該当する可能性のある集団は全体の8%程度であり人数としては多くはなく、解析のパワーとしては限界があるものの、食料不安の程度が深刻な層の要因は一部検討できている。より対策樹立につながりうる因子の探索を引き続き実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一つ目のデータの解析に取り組んでいる。学術変革領域を通じて得た状況の理解をふまえて、貧困を取り巻く既知の知見を食料不安という概念において再確認するのにとどまらず、より対策樹立に結び付くよう解析を検討している。おおむね予定通りであるが、引き続きの検討が必要である。また、二つ目のデータセットについてもすでにデータとしては得ており新たな所属機関での倫理審査を経て解析を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き上述の産後の食料不安の状況について解析を実施し、結果を得る予定である。また、二つ目のデータについては、小中学生を対象として、新型コロナウイルス感染症にともなう緊急事態宣言で休校となった期間とその約半年後の2回において小中学生に対して実施した調査における食料不安の構成要素に関する回答ごとの栄養摂取量や食品摂取量等の詳細な栄養摂取データとの関連を検討する。食料不安の一つのドメインのみでは食料不安全体をとらえうるものではないものの、栄養摂取状況の詳細との関連を検討できる機会は多くないと考えられるため、貴重な今後の資料となりうると考えられる。
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