2023 Fiscal Year Annual Research Report
有機触媒反応から学ぶ光駆動型ラジカル酵素の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Systems biosynthetics based on accumulation, prediction, and creation of biological reactions |
Project/Area Number |
23H04554
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
加藤 俊介 大阪大学, 大学院工学研究科, 助教 (60909125)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 生体触媒 / 有機触媒 / 光ラジカル反応 / 進化分子工学 / チアミン二リン酸 / フラビン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、酵素の反応適用範囲を光化学的に拡張することをめざし、光励起によるラジカルカップリング反応を促進する新規生体触媒の開発に着手する。 具体的には、チアミン二リン酸/フラビンアデニンジヌクレオチド依存性酵素の反応機構をベースに、光増感剤からの一電子移動プロセスを組み込むことで、自然界には見られないラジカル的な反応プロセスを酵素に付与することをめざす。2023年度の研究成果として、種々のチアミン二リン酸/フラビンアデニンジヌクレオチド依存性酵素の遺伝子ライブラリをスクリーニングすることで、目的のラジカルカップリング反応を触媒する好熱性放線菌由来の酵素を同定することに成功した。本酵素は、ピルビン酸と2-ブロモプロピオン酸エチルのラジカルカップリング反応に対して有望な触媒活性を示し、目的の2-メチルアセト酢酸エチルを最大15%の収率で与えることが判明した。さらに、このチアミン二リン酸依存性酵素の活性中心に対して、チロシンやトリプトファン等のアミノ酸残基を変異導入することで、そのラジカルカップリング反応に対する触媒活性が向上することが判明した。活性中心に導入されたチロシンやトリプトファンは、電子受容体として機能し、補因子からの電子移動によるラジカル反応の進行を仲介しているものと考えられる。今後、同定したチアミン二リン酸依存性酵素のさらなる触媒活性と基質一般性の向上をめざし、酵素の活性中心に対する遺伝子工学的な改変を実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、酵素の反応適用範囲を光化学的に拡張することをめざし、光励起によるラジカルカップリング反応を促進する新規生体触媒を開発することを目的とする。2023年度の研究成果として、既に、目的のラジカルカップリング反応を触媒する好熱性放線菌由来のチアミン二リン酸/フラビンアデニンジヌクレオチド依存性酵素同定することに成功した。さらに、このチアミン二リン酸/フラビンアデニンジヌクレオチド依存性酵素の活性中心に対して、ドッキングシミュレーションに基づく遺伝子工学的改変を実施することで、そのラジカルカップリング反応に対する触媒活性を大幅に向上させることに成功している。以上の成果から、おおむね順調に進展しているとの評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、同定したチアミン二リン酸/フラビンアデニンジヌクレオチド依存性酵素のさらなる触媒活性と基質一般性の向上をめざし、酵素の活性中心に対する遺伝子工学的な改変を実施する。特に、基質であるハロゲン化アルキルと本酵素とのドッキングシミュレーション・分子動力学計算を実施し、チアミン二リン酸依存性酵素本来の高い基質特異性を緩和する有効な変異導入点を予測する。また、獲得された高活性酵素 変異体に対して、反応速度論的解析・X線結晶構造解析・EPR測定等の詳細な解析を実施し、酵素の反応機構に対する知見を得る。さらには、新しく開発した酵素反応系を、微生物が持つ代謝経路と組み合わせることで、バイオマス(再生可能資源)から医薬品合成中間体などの高付加価値な光学活性化合物を生産するプラットフォームを確立することをめざす。
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