2023 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental and theoretical studies on the interaction of high-energy UV vortex synchrotron radiation with biomolecules
Publicly Offered Research
Project Area | Chiral materials science pioneered by the helicity of light |
Project/Area Number |
23H04597
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松尾 光一 広島大学, 放射光科学研究センター, 准教授 (40403620)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光渦 / 軌道角運動量 / 放射光 / 渦二色性 / モーメント法 / 生体分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
キラリティーは、さまざまな材料の特性や機能を解明するための重要な構造因子であり、スピン角運動量持つ左右円偏光による円二色性分光法は、紫外領域で生体分子のキラリティーを検出するための強力なツールである。一方、軌道角モーメントを利用した光渦も物質のキラリティーを検出する手法として期待されている。本年度は、放射光を用いて光渦と生体分子との相互作用を観測する紫外実験系を構築し、またモーメント法によるシミュレーションを用いて相互作用の存在を理論的に検証した。光渦実験は、UVSOR-IIIのAPPLEII型ヘリカルアンジュレーターBL1Uにて実施した。紫外領域における光渦の二重スリット及び三角アパチャーによる回折パターンを観測した結果、いずれも光渦で見られる特殊な回折パターンが得られた。これにより、紫外領域での光渦の発生を確認することができた。d-10カンファースルホン酸の円偏光渦二色性と直線偏光渦二色性スペクトルを波長305-270nmの範囲で観察した結果、円偏光渦二色性が観測されたが、直線偏光渦二色性は観測されなかった。さらに、円偏光渦二色性の強度は、円二色性よりも増大しており、暫定的な結果であるが、紫外領域でも渦二色性の存在が示唆された。完全導体のヘリカルコイル(シングル、ダブル、トリプル)を入射電磁波(右および左光渦:波長190と20nm)の中心に置き、モーメント法を用いて、散乱総電力と放射パターンを計算した結果、各ヘリカルコイルからの放射パターンは、190 nm では右と左光渦でほぼ一致したが、20 nm では大きく異なり、またヘリカルコイルの種類に依存することが分かった。同様な結果が、ヘリカルコイルからの散乱総電力からも得られ、光渦とヘリカルコイルの相互作用は、波長やヘリカル構造に強く依存することが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、放射光光源を用いて紫外光渦の観測システムを構築することができ、また紫外光渦発生の確認、キラル分子の測定を実施することができた。また測定波長点が限られるが、同時並行でレーザーを用いた光渦実験のシステムも構築することができ、すでにキラル分子の測定を実施している。さらに、理論計算においてもモーメント法を用いた計算手法を確立することができ、波長やヘリカルコイル構造を変化させた場合の結果も得られている。国内・国際会議での研究成果報告も随時行っており、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
放射光実験では、L型のカンファースルホン酸の測定を行い、円偏光渦二色性の発生に対するさらなる理解を深めると共に、生体分子であるタンパク質・核酸・多糖類の測定を実施する。また、測定装置の高度化として小型分光器を用いた手法を採用し、広範囲の紫外領域の光渦強度が短い時間で観測できるようにする。理論計算では、右と左光渦の散乱強度の差だけでなく、吸光度に関するパラメーターも獲得できるように計算方法を改良する。また、ヘリカルコイルの数や向きを考慮した計算を進め、実験状況に近い環境での散乱や吸収の挙動を確認する。
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