2023 Fiscal Year Annual Research Report
Chiro-thermo-optical reaction fields at the nanometer scale
Publicly Offered Research
Project Area | Chiral materials science pioneered by the helicity of light |
Project/Area Number |
23H04608
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
瀬戸浦 健仁 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90804089)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 局在表面プラズモン共鳴 / 光熱変換 / サーモプラズモニクス / 窒化チタン / 窒化ジルコニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、金属ナノ構造にみられる局在表面プラズモン共鳴をキラル光の照射によって励起することでナノメートル領域で光熱変換を起こし、局所的な温度上昇とそれに伴う熱対流および熱泳動を駆動して、物質のキラル秩序化を促進することを目的としている。 初年である本年度は、有限要素法による電磁場および温度場の数値シミュレーションによって、高次モードのプラズモン共鳴によってナノロッド表面の温度分布をスイッチングできることを実証するという成果を挙げ、原著論文として出版した。この成果によって、励起するプラズモンモードのスイッチングによってナノメートル領域の温度上昇およびそれにともなう熱対流を制御できることが原理的に可能であると判明した。 この計算手法を用いて、誘電体基板上に置かれた卍形状のキラルな金属ナノ構造を対象に同様の計算を行ったところ、右回り円偏光・左回り円偏光の照射によってナノ構造表面の温度分布が数十ケルビン程度も大きく変化した。これほど大きな温度スイッチングができれば、物質のキラル秩序化に必要な熱対流や熱泳動などの外部場が駆動できるため、初年度の目標であった「数値シミュレーションによるキラルな光熱ナノ構造の設計」は達成できたと言える。 他方で数値シミュレーションと並行して、微細加工技術によって所望のナノ構造が作製できるかの試験も行った。このために外部機関の電子線リソグラフィー装置を利用し、種々の加工パラメータを振って窒化チタンの卍形ナノ構造を試作したところ、一部のパラメータセットでは作製に成功した。よって、次年度の実証実験に向けた準備状況も十分である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は数値シミュレーションによって「キラル光の照射によって温度場および流れ場をスイッチング可能な金属ナノ構造の設計」であった。これを可能とするために、局在表面プラズモンの研究に広く用いられてきた金および銀などの貴金属に代わって、窒化チタンおよび窒化ジルコニウム、そしてマンガンなど、遷移金属や遷移金属窒化物をナノ構造の材料として用いることを着想した。数値シミュレーションでは、マンガンのナノ構造で顕著な温度スイッチングが可能であることを見出し原著論文として出版したので、進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
数値シミュレーションによるキラルな光熱ナノ構造の設計、および電子線リソグラフィーによる試作も順調に進んだため、今後はこのナノ構造に円偏光のレーザー光を照射して、物質のキラル秩序化に関する実証実験を進める。そのために、まずは外部機関の電子線リソグラフィーなど微細加工装置を利用し、十分な実験回数を確保することを目的として、金属ナノ構造を周期的に配置した基板を多数作製する。 実証実験では、キラル秩序化のモデル分子としてよく用いられている塩素酸ナトリウムを用いる予定である。このために、塩素酸ナトリウムのキラリティ判別が可能な偏光顕微鏡を構築し、さらに高品質な右回り・左回りの円偏光のレーザー光を準備し、ナノ構造へのレーザー照射実験を行う。これらの実証実験によって、円偏光によって制御されたナノメートル領域の温度上昇および流れ場などによって、キラル秩序化が促進されるか検証する。
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