2023 Fiscal Year Annual Research Report
超セラミックスのデータ科学的構造探索とDXデータベース構築
Publicly Offered Research
Project Area | Supra-ceramics: Molecule-driven frontier of inorganic materials |
Project/Area Number |
23H04623
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
本郷 研太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 准教授 (60405040)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | セラミックス / 構造探索 / 遺伝的アルゴリズム / 第一原理計算 / 分子動力学法 |
Outline of Annual Research Achievements |
超セラミックス結晶構造は、結晶中の分子内自由度に由来して、局所的には複雑に縮退したエネルギー構造を持ち、大域的には結晶構造の異なる複数の多形構造を持つ。本研究は、分子性アニオンを内部に含む結晶体(内圏型超セラミックス材料)を対象として、その構造探索において、超セラミックス性に由来する独特の難しさを明らかにし、その困難性を克服するデータ科学的構造探索手法を確立する。領域内の実験グループとの協働を通じて、本研究で確立したデータ科学的手法の技術移転を推進し、特に、計算科学やデータ科学に通暁した若手実験家の育成を目指す。今年度は、領域内実験グループと共同して、カルボジイミド化合物BaCN2を対象とするデータ駆動型構造探索を行い、低圧領域での構造相転移を起こす2種類の結晶多形に対して、その構造相転移の発現機構解明に取り組んだ。低圧領域の2つの構造は、金属カチオン(Ba)とアニオン(C)間の結合ネットワークに着目すると、無機化合物系の相転移として有名なB1(面心立方格子)-B2(体心立方格子)相転移に相当する。B1-B2相転移における構造変化に対して、VCNEB(variable-cell nudged-elastic band)法に基づく遷移状態計算を実施し、分子性アニオンの構造自由度に起因する複雑な構造変化とそれに呼応するポテンシャル曲面形状を捉えることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内圏型超セラミックス中のアニオン分子の構造自由度が結晶多形の発現にどのように寄与するか?が本研究課題の基本となる問いである。今年度は、アニオン分子としてNCNを含むカルボジイミド化合物を対象として、多形間に生じる構造相転移におけるNCN分子アニオンの役割を明らかにした。得られた結果を取りまとめ、原著論文の執筆を終え、投稿に向けた最終確認をしているところである。また、共同研究を実施している実験グループ所属の大学院生に対して、当該計算の基礎となる第一原理電子状態計算については技術移転を完了しており、現在、本研究で確立したデータ駆動型構造探索、及び、遷移状態計算に関する技術移転を進め、実験と計算の両方に通暁した若手の育成にも注力しており、本領域における人材育成にも貢献している。
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Strategy for Future Research Activity |
年度は、昨年度に実施したカルボジイミド化合物の構造相転移の発現機構に関する研究成果を原著論文として出版するとともに、実験グループとの共同研究の実施と、そこで確立した計算科学の技術移転を推進する。超セラミックス結晶の多様な結晶多形を、進化論的アルゴリズムに基づくデータ駆動型構造探索を行い、得られた多形間での大域的なポテンシャル曲面構造、特に、どのような構造自由度を通じて構造変化が生じるのかを遷移状態計算を用いて解明する。また、超セラミックス化合物では、分子性アニオンに伴う構造自由度をもつが、さらにその表面系は多様な表面状態が発現する。今年度は、この表面自由度の多様性な物性/物質機能を探索する。また、領域内で発見・合成された新奇超セラミックスの構造・物性データベースの構築にも取り組む。
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