2023 Fiscal Year Annual Research Report
液体で創る金属錯体系超セラミックス:固体を「その場合成」する革新的合成法
Publicly Offered Research
Project Area | Supra-ceramics: Molecule-driven frontier of inorganic materials |
Project/Area Number |
23H04629
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
持田 智行 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30280580)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 有機金属錯体 / 配位高分子固体 / イオン液体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、各種のアニオンを有する有機金属イオン液体の光反応・熱反応によって、多様な構造・機能を有する配位高分子・架橋型錯体固体をその場構築する手法を開拓する。今年度は主に、配位性アニオンを有する新規光架橋型Ru錯体含有イオン液体を設計し、その反応性を評価した。二置換ルテニウム錯体と種々の配位性アニオンを組み合わせたイオン液体では、非配位性アニオンを有する系に比べて、光反応速度および転換率が向上した。これは、光反応に伴ってアニオンがルテニウムに配位するためである。反応に伴う構造変化を、各種の共同研究を通じて解明した。光生成物の構造はカチオンおよびアニオンの構造に応じて大きく異なり、多くの場合には光照射によってイオン液体からアモルファス低次元配位高分子に転換したが、いくつかの系では二核錯体や結晶性配位高分子が生じた。反応の可逆性はアニオンに依存し、光生成物が加熱で元のイオン液体に戻るもの、段階的に熱戻りするもの、熱分解するものがあった。ここでは可逆反応性を持つ配位性アニオン含有イオン液体が初めて実現された。これらの光・熱反応に伴うイオン伝導度変化を検証した結果、非配位性アニオンを有する系に比べて変化が大きいことが判明した。このように、配位性アニオンの有用性が明らかになった。以上に加え、種々の共同研究を通じて、錯体カチオンの光解離に基づく構造転換系の開拓、配位高分子の構造変換に関する検討、および錯体カチオンとポリオキソメタレートからなる塩の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規光架橋型液体の反応性および生成固体の構造評価が進んだ。さらに、共同研究を通じて研究課題が拡張された。これらは今後の展開につながる成果であり、進捗状況に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は第一に、光反応性液体の架橋性固体への転換過程および生成物の構造・物性評価を継続する。前年度の共同研究によって、光生成物の構造評価が進展した。この結果を踏まえ、反応条件や後処理方法に応じた構造変化を検証し、電子顕微鏡による生成物の形態観察を行う。さらに、第一原理計算を適用して、光反応原理の検証を行う。これらの素反応である光配位子脱離反応についても、共同研究を通じて機構を解明する。第二に、光・熱反応性液体の物質開拓・構造制御を進め、反応性・構造・機能を拡張する。昨年度は新たなアニオン種を用いた系の開拓を進めたが、今年度はカチオン種および置換基の拡張も進め、次元性や結晶性の異なる構造および空間空隙の構築を試みる。生成した架橋性固体の物性・機能を評価し、いくつかの光生成固体については抗菌活性を評価する。第三に、後修飾による光生成固体の機能化を試みる。これらの検討を通じ、物質転換に基づく機能転換の実現をはかる。
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