2023 Fiscal Year Annual Research Report
脳組織制御性T細胞の抗原や抗原提示細胞の同定による脳組織保護
Publicly Offered Research
Project Area | Reevaluation of self recognition by immune system to decipher its physiological advantages and pathological risk |
Project/Area Number |
23H04785
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 美菜子 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (70793115)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / T細胞受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞は獲得免疫反応において重要な役割を担っており、制御性T細胞(Treg)は免疫寛容において重要な役割を果たしている。Tregは非リンパ組織や損傷組織に存在し、「組織Treg」と呼ばれている。組織特異的な特徴を持ち、組織細胞との相互作用を通じて免疫調節、恒常性維持、組織修復に貢献している。しかし、抗原特異性、組織環境、病態など、Tregの組織特異性の重要な決定因子は不明なままである。 脳梗塞や実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の制御性T細胞に発現するT細胞受容体(TCR)配列をscRNAseq解析により同定した。そのうち、脳梗塞の脳やEAEの脳や脊髄でオリゴクローナルに増殖したTCRをGFP発現レンチウイルスベクターにクローニングし、TCRを欠損するTG40と58-α-β-T cell hybridomaに発現させた。EAEマウスのTregのTCRはEAE誘導時に抗原として用いたミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)を認識するものが多かった。高いクローナリティを持つT細胞受容体(TCR)のほとんどがEAEマウスの脳と脊髄の両方に存在した。脊髄ではGata3+およびRorc+ TregがMOGを認識するTCRを発現しており、Rorcの発現に適した組織環境であることが示唆された。脊髄と脳における組織特異的なケモカイン/ケモカイン受容体相互作用は、Tregの局在に影響を与えた。最後に、脊髄または脳由来のTregは、それぞれEAEマウスまたは脳卒中マウスにおいて、より高い抗炎症能と組織修復能を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗原の同定には至っていないが、TCRと関連して脳と脊髄のTregの特徴の違いを明らかにし、論文投稿中であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
腸管のRorγt+ Tregの誘導やEAE発症に必要なMHC-II発現ILC3など、新たな抗原提示細胞の重要性が示唆されている。脳梗塞後の脳組織でも樹状細胞だけでなく、ミクログリアやアストロサイトなどの脳組織細胞もMHC-IIを発現する。そこで、脳Tregの誘導に必要な脳由来抗原と脳内での生存維持に関与する抗原提示細胞を同定する。 T細胞が抗原提示細胞と結合したままの状態(ダブレット)で分画する技術が確立されている。我々自身の手でもフローサイトメトリー解析によるダブレットの確認とscRNAseqで抗原提示細胞とT細胞の遺伝子が検出できるポピュレーションを確認した。免疫細胞だけでなくアストロサイトなどの脳組織の細胞も単離し、MHC-II陽性細胞のscRNAseq解析を行う。その際に、タブレット除去を行わずにソートすることで、Tregと結合しているMHC-II陽性細胞を同定する。細胞特異的CreマウスとMHC-II floxマウスを利用して、脳Tregの抗原提示細胞を同定する。 同定したTCRを導入したT細胞と抗原提示細胞を脳梗塞マウス由来の脳内物質存在条件下で共培養することでできるダブレットを分画する。または、TCR Tgマウスからダブレットを分画する。これらの画分からMHCクラスII結合ペプチドを単離し、LC-MS/MSで配列を同定する。 1つの抗原提示細胞の提示するペプチドは複数あるため、enrichされている候補のペプチド配列をピックアップして合成し、in vitroの培養系でスクリーニングを行い、脳TregのTCRと応答するペプチドを絞り込む。ペプチドの由来タンパク質についても予測し、ヒトTCRとの応答性を検討する。アストロサイトや抗原提示細胞との共培養系などを用いてin vitroで活性化・増殖したTregを治療応用に用いる。
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