2023 Fiscal Year Annual Research Report
海洋の微量栄養素マンガンを用いたオホーツク海高密度陸棚水の追跡
Publicly Offered Research
Project Area | Macro coastal oceanography: integrated simulation for the material dynamics from the land through the open ocean |
Project/Area Number |
23H04814
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
漢那 直也 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90849720)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マンガン / オホーツク海 / 西部北太平洋 / 微量元素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,海洋の微量栄養素であるマンガン(Mn)に着目し,北部オホーツク海大陸棚から西部北太平洋へ運び出されるMnを定量化するとともに,Mnが西部北太平洋の基礎生産に与える影響を解明することが目的である.2023年度は,西部北太平洋において海洋観測を実施した.また西部北太平洋の海水試料およびオホーツク海のアーカイブ試料中のMnを測定し,データ解析を進めた. 海洋観測:2023年6月に西部北太平洋亜寒帯域(35-51°N,166°E)でCTD―CMSを用いたクリーン採水を実施し,Mnを始めとする微量元素測定用試料を採取した.また海水混合による表層への鉄およびMn供給が,植物プランクトンの増殖に与える影響を調べるための船上培養実験を実施した.西部北太平洋の表層水と中層水を,異なる比率で人為的に混合し,混合水中の植物プランクトンの増殖応答を船上で7日間モニタリングした.また植物プランクトンに利用された混合水中の鉄およびMn濃度の時間変化に関するデータを取得した。 データ解析:オホーツク海のアーカイブ試料および西部北太平洋の海水試料の溶存態Mnを測定し,オホーツク海北西部大陸棚から西部北太平洋までの溶存態Mn濃度の鉛直断面分布を明らかにした.大陸棚直上のMn濃度は,周囲の海水に比べて顕著に高い値を示し,大陸棚からのMn供給の重要性を見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり,オホーツク海のアーカイブ試料の分析が概ね完了し,北部オホーツク海大陸棚から西部北太平洋をつなぐMnの濃度分布が初めて明らかになった.また,西部北太平洋亜寒帯域で実施した植物プランクトンの船上培養実験の結果は,冬季混合により中層から表層へ供給される微量元素(特に鉄)が,植物プランクトンの増殖を促進し,混合の程度によりその増殖速度や群集組成が変わることを示していた.一方で,中層から表層海水へ加わったMnは,植物プランクトンの増殖にほとんど影響を与えないことも明らかとなった.以上の結果がすでに得られていることから,現在までの進捗状況はおおむね順調であると総合的に判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,西部北太平洋親潮域および,親潮と黒潮が混合する移行領域における観測を実施する.移行領域では,親潮と黒潮の海水混合に伴い,中層から表層への鉄およびMn供給が生じうる海域と考えられる.この移行領域において植物プランクトンの船上培養実験を実施し,実際に海水が混合している場において,植物プランクトンの増殖量を制御する要因を明らかにする.また2024年度は,溶存態だけでなく,粒子態のMnの分析および解析を進める.西部北太平洋の広い範囲で得られる溶存態および粒子態Mnの分析を行い,西部北太平洋のMn濃度分布およびその分布を決める制御因子を定量的に評価する.また,現場観測および船上培養実験で得られた成果について国内外の学会で発表し,オホーツク海由来のMnが,西部北太平洋の基礎生産に与える影響に関する論文出版を目指す.
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Research Products
(5 results)