2012 Fiscal Year Annual Research Report
検察審査員の判断を規定する要因および判断に至る心的プロセスについての実証的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Law and Human Behavior |
Project/Area Number |
24101506
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 優子 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (20507149)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 検察審査員 / 司法判断 / 起訴 / 議決 |
Outline of Annual Research Achievements |
24年度は、検察審査員の判断に影響を及ぼす要因について明らかにする目的で、各地の検察審査協会の協力のもと、検察審査員経験者31人を対象にした質問紙調査(研究1)を実施した。また、市民(大学生)93人を対象にした模擬検察審査会実験(研究2)を実施した。 研究1では、(1)検察審査会についての知識、(2)審査内容、(3)検察審査会制度の意義および改善点、について回答を求めた。その結果、71%が審査員候補に選ばれるまで検察審査会制度について「知らなかった」と回答し、そのうち、「事務局の説明を受けた後に理解できた」と回答した者は60%であった。審査内容は、交通事故、横領、遺産相続など多岐にわたり、45%が審査の際に「法律の知識」が必要であったと回答した。また、「被害の大きさ」、「審査申立て人の処罰感情」、「社会に与える影響」、「被疑者が裁判で有罪となる可能性」のいずれも、「判断に影響した」と回答した者、「影響しなかった」と回答した者の割合にちがいはみられなかった。さらに、42%が検察審査会制度の意義について「市民の常識的判断の司法への反映」を挙げ、検察審査会制度の趣旨である司法への「民意の反映」に重きが置かれる傾向が示された。改善すべき点としては、「目を通す文書の量が多いこと」、「任期期間が短いこと」等が挙げられた。 研究2では、過去に検察審査会で審理された複数の事案の概要を提示し、検察審査員としての判断(起訴相当、不起訴不当、不起訴相当)を求めた。その結果、検察審査員としての判断には、「申立人の処罰感情」が強く影響することが示された。また、判断に影響を及ぼす要因として、「処罰感情や世論の考慮」に関連する因子、「法律の考慮」に関連する因子の存在が示され、どちらの影響を強く受けるかによって、異なる判断が導きだされる傾向が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究では、検察審査員経験者31人に対する調査を実施し(研究1)、検察審査員の判断を規定する要因を抽出した。また、検察審査会事務局長2人、検察審査員経験者4人を対象にした対面調査を実施し、模擬検察審査会実験の実施について助言を得ることができた。さらに、市民(大学生)93人を対象にした模擬検察審査会実験を実施し(研究2)、複数の事案に対する判断から、検察審査員の判断に影響する2つの要因―「処罰感情や世論の考慮」に関連する因子と、「法律の考慮」に関連する因子の存在を示すことができた。 以上、検察審査員の判断を規定する要因について明らかにするという24年度の研究目的は、概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、模擬検察審査会実験を実施し、評議過程における検察審査員の判断に至る心的プロセスを質的分析と量的分析を行うことで明らかにする。24年度の検察審査員経験者に対する調査から、70%以上は検察審査会に対する知識がなかったこと、45%が審査にあたって法律の知識が必要だったと回答し、その中には説明を受けても十分理解できなかったと回答する者がいたことから、25年度に実施する模擬検察審査会実験では、法の実務家の協力を得て、法律の説明を十分に行うことに留意する。また、検察審査員としての経験を積むことが、判断にどのような影響を及ぼすかについても検討を行う。
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